一人社長として法人を運営していると、「旅費規程を作ったほうがいいのか」「自分の会社でも必要なのか」と迷うことがあります。節税に役立つと聞く一方、税務上のリスクが気になり、踏み出せない人もすくなくありません。
そこでこの記事では、一人社長で旅費規程を作れるのかという基本的な考え方から、作るメリット、注意すべきポイント、失敗しやすいケースまでを整理します。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
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一人社長でも旅費規程は作れるのか?

結論、一人社長でも旅費規程は作れます。従業員がいない会社でも、法人である以上、旅費規程を定めること自体に問題はありません。
旅費規程の本質は、出張にかかる費用の取り扱いルールを社内で明確にすることです。そのため、社長一人の会社であっても、出張が発生するのであれば規程を整備する意味があるでしょう。
一人社長の場合、出張へ行くのは基本的に社長本人です。そのため、「自分で決めて、自分に支払うのはおかしいのでは?」と感じるかもしれませんが、法人と個人は別人格として扱われ、特に問題視されることではありません。会社として合理的なルールを定め、そのルールに基づいて処理が行われていれば、形式上も実務上も問題ないのです。
一人社長が旅費規程を作るメリット

一人社長が旅費規程を作るメリットは、経費処理時の判断の迷いを減らし、処理自体を安定させることです。節税だけを目的にするのではなく、実務やリスク管理の面でもメリットがある点は、一人社長だからこそ押さえておきたいポイントです。
ここでは、一人社長が旅費規程を作ることで得られる主なメリットを、実務の視点から具体的に紹介します。
その1:出張に関する経費処理をルール化できる
旅費規程によって、出張の定義、対象となる費用、精算方法がルールとして明文化され、経費精算時の手間が省けます。結果として、経費処理のブレを防ぎ、同じ処理を継続できるようになります。
出張について経費処理をルール化することは、日々の実務をシンプルにし、安心して処理を続けるための土台づくりになるでしょう。
その2:税務調査時に説明がしやすい
万が一、税務調査がなされた場合、「なぜその金額なのか」「どんな基準で経費にしているのか」を、社内ルールに基づいて処理していると説明がしやすくなります。これは、一人社長にとって大きな安心材料となるでしょう。
税務調査で重視されるのは、金額の多寡よりも考え方に一貫性があるかどうかです。旅費規程で出張の定義や費用の扱いを明確にしておけば、「なぜこの処理をしているのか」を論理的に説明しやすくなります。
その3:経理・帳簿の手間を減らせる
旅費規程を作っておくと、出張での経費処理があらかじめ決められているため、仕訳や精算の際に迷いが少ないです。交通費、宿泊費、日当などをルールに沿って処理するだけで済み、経理・帳簿の対応にかかる時間を減らせます。
また、処理方法が統一されることによって、帳簿の内容も整いやすくなります。後から帳簿を見返したときの確認方法もスムーズになり、ミスや処理漏れを防ぐことにもつながります。
その4:出張コストを把握しやすくなる
旅費規程によって、出張にかかわる費用を一定のルールで処理できるため、支出の傾向が見えやすくなります。出張ごとのコストが可視化されることで、「この出張は必要だったか」「オンラインで代替できないか」との検討材料になり、無駄を削るだけでなくお金の使い方を見直すきっかけになるでしょう。
一人社長にとって、出張コストは事業活動の一部ですが、売上を立てるためにはコストを最小限にしたいものです。出張コストの把握は、経費管理だけでなく、今後の事業の進め方を考えるうえでも役立つ視点です。
その5:一人社長でも安心して経費処理ができる
顧問税理士を雇わない限り、一人社長は経費の判断から処理までをすべて自分で行うため、経理処理対応に苦手意識がある場合には処理に多くの時間を割くことになります。それが旅費規程を作成するだけで手間が省けます。
また、旅費規程による経費処理のルール化は、勘定科目が明確で仕分けも支払い対応もしやすくなります。無理のない内容で整備しておくことで余計な労力を使わずに済み、事業に集中できる環境を整えられるでしょう。
一人社長が注意すべき旅費規程のポイント

旅費規程の作成にあたって一人社長が注意すべきポイントは、ルールの合理性と一貫性です。ここでは、一人社長が旅費規程を作る際に注意しておきたいポイントを紹介します。
その1:相場と合理性を意識した「金額設定」
まず注意したいのが、金額設定です。日当や宿泊費の上限額は自由に決められているように見えますが、実際には相場とかけ離れていないか、合理的な説明ができるかが重要です。
特に、一人社長は自分で決めて自分に支給することとなるため、金額が高すぎると恣意的に見られかねません。一般的な相場、同規模・同業種の水準を参考にするのが無難です。あわせて、自社の事業規模や出張頻度に見合った金額になっているかも確認しましょう。
その2:実態にともなっている「出張内容」
金額設定と同じくらい重要なのが、出張内容が実態をともなっているかです。いくら規程が整っていても、実際の予定と業務との関連性がなければ、経費として認められにくくなります。
一人社長だと業務とプライベートの境界があいまいになりやすく、「仕事も兼ねているつもりだった」「ついでに仕事の用事も済ませた」といったケースも起こりがちです。しかし、出張として扱う以上、業務目的が明確であることが前提となります。
その3:仕事とプライベートの「明確な線引き」
一人社長の場合、仕事とプライベートの境界があいまいになりやすいです。特に、私用も兼ねた外出や旅行をどこまで出張として扱えるのか、悩みやすいです。
そのため、出張として経費にする条件を明確にしておくことが重要です。業務目的を明確にできるか、移動や宿泊が業務遂行に必要かといった基準を定め、プライベートの外出との区別しましょう。
一人社長が旅費規程で失敗しやすいケース

旅費規程は、一人社長にとって心強い仕組みですが、作り方や運用を誤ると逆にリスクの種になってしまいかねません。ここでは、実務の際に失敗しやすいケースを紹介します。
その1:ネット上のテンプレートをそのまま使う
旅費規程を作る際、ネット上で見つけたテンプレートをそのまま使ってしまうケースは少なくありません。
テンプレートは作成する際に便利ですが、その多くは従業員のいる会社や、一定の出張頻度があることを前提に作られ、一人社長には当てはまらないことが多いです。テンプレートを使うにしても、出張の実態や事業内容にあわせて調整し、置かれている状況に合う旅費規程を作りましょう。
小島美和ネットで見つけたテンプレートを基に加筆修正した旅費規程が事業に適切か確認したい場合は、税理士に相談するのがおすすめです。
その2:金額を相場以上に高く設定しすぎる
日当や宿泊費の上限を相場以上に高く設定しすぎると、税務上のリスクが高まります。
税務上で重視される「合理性と説明できる根拠があるかどうか」を重視しましょう。一般的な相場、自社の事業規模、出張内容と照らし合わせて説明できない金額設定をすると、税務調査時やその後に経費と認められないリスクが高まるでしょう。
その3:出張の実態があいまいなまま計上する
旅費規程を定めていても、出張の実態があいまいだったり架空のものだったりすると、税務調査時に経費として認められないかもしれません。どこへ何のために出張したのかを説明できない状態では、旅費規程があっても安心材料にはならないでしょう。
また、私用を兼ねた外出や移動を、そのまま出張として計上するケースも注意が必要です。仕事の要素が含まれていたとしても、出張として扱うには、注意の関連性がハッキリしているかが問われます。
出張内容があいまいなまま計上するのではなく、後から見返しても説明できる状態で運営することが、一人社長が旅費規程で失敗しないためのポイントになるでしょう。
その4:業務とプライベートの線引きができていない
一人社長の場合、仕事とプライベートの行動が混在しやすく、出張の経費処理でも線引きがあいまいになりがちです。私用を兼ねた移動や宿泊を、そのまま出張として処理してしまうケースは少なくありません。
業務として必要である以上、基準は「業務遂行に必要だったかどうか」です。すべての支出を経費にしようとせず、業務に直接関係する支出のみを経費対象とした方が、結果的にリスクを下げ事業継続に効果的でしょう。
その5:旅費規程を作ったまま運用を見直さない
事業内容や働き方は変化するので、旅費規程の定期的な見直しが重要です。作成当時のまま見直さずに使い続けてしまうと、実態とのズレが生じ、適切な運用ができているとは言えません。
- 日当の金額は相場の範囲内であるか
- 今の事業内容に合っているか
- 無理なく運用できているのか
といった視点を持っておきたいです。
一人社長の場合、見直しのタイミングを決めておかないと後回しになりがちです。期の切り替わりや事業内容が変わったタイミングなど、節目ごとにチェックする習慣を持つことで、安心して旅費規程を運営し続けられるでしょう。
まとめ


一人社長でも、旅費規程は作れます。従業員がいないと作れないものではなく、出張にかかる経費を安定させるためのルールとしても役立ちます。
旅費規程の作成にあたって大事なのは、自分の事業実態に合う、説明できるルールにすることです。定期的に見直ししながら運用すれば、心強い仕組みとして活用できるようになるでしょう。
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