- 取引先や身近な人との人間関係がうまくいかない
- 特定の人と関わると心がズーンと重くなって疲れてしまう
- ハラスメントは聞いたことあるが、どんな種類があるのか知りたい
個人事業主や小規模事業者として事業をしていると、お客様や従業員、支えてくれる人たちとの良好な人間関係はとても大切です。しかし、付き合いの長さに関係なく、突然その関係が壊れてしまうことがあります。
原因は状況によって違っていても、その根本には互いに相手に不満を持っていることが多いです。立場上、搾取されて…つまり、ハラスメント行為を受けて心身が疲れてしまっているケースが多いです。
そこでこの記事では、仕事で起こり得るハラスメントの種類について紹介します。
ハラスメントの定義とは?
ハラスメントは、相手が不快に感じるような言動や行為を行い、不快感や苦痛を与える言動を指します。これには、相手を精神的に傷つけたり、人格を否定したり、不安や恐怖を感じさせるような行為が含まれています。
とはいっても、相手が不快に感じたらすべてハラスメントに当てはまるわけではありません。ハラスメントの定義は厚生労働省が以下のとおり定めており、この3つの要素をすべて満たすものとしています。
厚生労働省『パワーハラスメントの定義』
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。また、上記の「労働者」は、正規雇用だけでなく非正規雇用も含みます。
仕事上で起こり得るハラスメント20選
個人事業主や小規模事業者の仕事上で起こり得るハラスメントには以下のようなものが挙げられます。
- その1:パワーハラスメント
- その2:セクシャルハラスメント
- その3:モラルハラスメント
- その4:ジェンダーハラスメント
- その5:エイジハラスメント
- その6:ルックスハラスメント
- その7:ソーシャルハラスメント
- その8:カスタマーハラスメント
- その9:デジタルハラスメント
- その10:言語ハラスメント
- その11:能力ハラスメント
- その12:地域ハラスメント
- その13:ステルスハラスメント
- その14:オンラインハラスメント
- その15:リモートハラスメント
- その16:メンタルヘルスハラスメント
- その17:レイシャルハラスメント
- その18:リライジャスハラスメント
- その19:ポリティカルハラスメント
- その20:アイデンティティハラスメント
その1:パワーハラスメント
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場などでの権力関係を利用して、上司が部下や同僚に対して精神的・物理的な圧力や嫌がらせを行う行為です。過度な要求、無視、過小評価、過度な監視、人格の否定、不当な批判、脅迫的な言動などが含まれます。
パワハラは権力や地位の差を背景に発生しやすいです。個人事業主や小規模事業者として仕事をしていても、取引先によっては高圧的な態度をされるなどパワハラと受け取れるような場合もあります。
その2:セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメントとは、性的な言動を通じて他人を不快にさせる行為です。不適切な冗談やコメント、性的な意図を含む身体的接触、強要される性的な行為、性的な画像やメッセージを無理に見せることなどが含まれます。
その3:モラルハラスメント
モラルハラスメントは、精神的な嫌がらせや攻撃を繰り返し行うことで、被害者の尊厳や自尊心を傷つける行為です。人格や価値観を否定するような言動、過剰な批判、無視、過小評価、脅迫的な言葉を使うことによって行われます。
モラルハラスメントの典型的な例には以下のような行為が含まれます。
- 絶えず否定的なフィードバックを与え、被害者の能力を貶める
- 無視や社会的な孤立を強いることによって、被害者を孤独にさせる
- 個人的な攻撃や人格に対する侮辱を行う
- 無理な要求を繰り返し、達成不可能な目標を設定する
- 被害者の発言や意見を常に却下する
その4:ジェンダーハラスメント
ジェンダーハラスメントは、性別に基づいて他人を不快にさせたり、差別したりする行為です。性別に関するステレオタイプに基づいた言動、性別を理由とした不当な扱い、性差別的なジョークやコメント、性別に基づく職場での機会の制限などが含まれます。
ジェンダーハラスメントは、性別が男性であろうと女性であろうと、または非バイナリー(性別に固定しない)の人々に対しても発生することがあります。
その5:エイジハラスメント
エイジハラスメントは、年齢を理由にした差別や嫌がらせのことを指します。年齢が高い、または低いというだけで、不当な扱いを受けたり、職場や社会活動において不利な状況に置かれたりする行為が含まれます。
エイジハラスメントは、若者に対して「経験不足」や「責任感がない」といった偏見に基づく扱いをしたり、高齢者に対して「時代遅れ」とみなし技術的な仕事から排除するなどの形で発生します。
その6:ルックスハラスメント
ルックスハラスメントは、個人の外見に関する特徴(顔の形、体型、髪型、肌の状態など)を理由にした差別や嫌がらせのことです。
外見に関する不適切なコメントやジョーク、見た目を理由にした職場での差別的な扱い、身体的特徴に基づく不当な評価や批判などが含まれます。
ルックスハラスメントは、被害者に自己イメージの低下や自尊心の損傷を引き起こす可能性があります。
その7:ソーシャルハラスメント
ソーシャルハラスメントは、ソーシャルメディアやオンラインコミュニティを通じて行われる嫌がらせや社会的排除のことを指します。
特定の個人に対する悪意のあるコメントやメッセージの送信、偽の噂の拡散、個人情報の不正な公開、オンライン上での名誉毀損、グループからの意図的な排除などが含まれます。
その8:カスタマーハラスメント
カスタマーハラスメントは、顧客やクライアントから従業員に対して行われる嫌がらせや不適切な行動を指します。小売店、サービス業、接客業など、顧客と直接対面する仕事で特に見られる問題です。
カスタマーハラスメントには、性的な言動、侮辱や暴言、不当なクレームや要求、身体的な接触、オンライン上での誹謗中傷などが含まれます。
その9:デジタルハラスメント
デジタルハラスメントは、インターネットやデジタルデバイスを使用して行われる嫌がらせや攻撃のことです。
ソーシャルメディア、メール、チャットアプリ、オンラインフォーラムなどのデジタルプラットフォームを通じて、ソーシャルメディア、メール、チャットアプリ、オンラインフォーラムなどのデジタルプラットフォームを通じて、他人を標的にした不適切なメッセージの送信、個人情報の不正な公開、オンライン上での名誉毀損、嫌がらせを目的とした連絡の繰り返し、フェイクニュースや偽情報の拡散などが含まれます。
デジタルハラスメントは、オンラインの匿名性やメッセージの迅速な拡散能力を背景に、特に若者を中心に広がっています。
その10:言語ハラスメント
言語ハラスメントは、話す言語、方言、アクセントなど、言語の使用に関する特徴を理由にした差別や嫌がらせを指します。特定の言語や方言を話す人に対する不適切なジョーク、侮辱、言語能力を理由にした仕事の機会の制限、アクセントを真似ることで相手を嘲笑う行為などが含まれます。
言語ハラスメントは、多文化・多言語社会において、特に外国人労働者、留学生、少数言語を話す人々などが直面する問題です。
その11:能力ハラスメント
能力ハラスメントは、職場などで個人の仕事の能力や成果を不当に評価し、その人を小馬鹿にしたり、能力に関する否定的なコメントを繰り返し行ったりすることです。
過度なプレッシャーをかける、不可能なタスクを割り当てる、公の場で能力を批判する、小さなミスを過剰に問題視するなどの行為が含まれます。
能力ハラスメントは、特に成果主義を重んじる職場環境や、高いパフォーマンスが求められる状況で見られることがあります。
その12:地域ハラスメント
地域ハラスメントとは、個人が出身地や居住地に基づいて不当な扱いを受けたり、嫌がらせを受けたりすることです。特定の地域出身者に対する偏見やステレオタイプに基づく差別、地域ごとの文化や習慣の違いを理由にした排除や侮辱などが含まれます。
たとえば、ある地方出身者に対して「田舎者」というレッテルを貼ったり、都市部出身者を「冷たい」と決めつけたりする行為が地域ハラスメントにあたります。居住地域に基づいて人を区別し、その人の能力や性格を一律に評価することも、地域ハラスメントの一形態です。
地域ハラスメントは、職場や学校、オンラインコミュニティなど、さまざまな場で発生する可能性があります。
その13:ステルスハラスメント
ステルスハラスメントは、表面上は明らかではないが、実際には相手を精神的に傷つけたり、不快にさせたりする微妙な嫌がらせのことを指します。
このハラスメントは、一見しただけでは嫌がらせと認識しにくい言動や行為によって行われるため、「隠れたハラスメント」とも呼ばれます。相手に対する直接的な攻撃や明確な差別行為ではなく、さりげないコメントや態度、行動パターンを通じて、相手をコントロールしたり不安にさせたりします。
ステルスハラスメントの例としては、以下のようなものがあります。
- あいまいな言い回しや二重の意味を持つコメントを使う
- 相手が何かを言いたくなるような状況を作り出しながら、実際にはそのチャンスを与えない
- 相手の意見や提案を公然と拒否するのではなく、細かく批判する
- 相手の仕事や成果に対する褒め言葉を使いつつ、その中に微妙な侮辱や批判を織り交ぜる
- 社会的な状況や集まりで相手を無視することにより、孤立感を感じさせる
ステルスハラスメントは、被害者が自分の感じている不快感やストレスの原因を他人に説明しにくいという特徴があります。被害者はしばしば自分の感情や反応について疑問を持ち、自己責任であると感じることもあります。
ステルスハラスメントに対処するためには、まずその行為を正確に認識し、記録を取ることが重要です。互いに尊重し合い、健全なコミュニケーションを心がけることが、この問題を解決する鍵となります。
その14:オンラインハラスメント
オンラインハラスメントは、インターネット上で行われる嫌がらせや差別、攻撃的な行動を指します。ソーシャルメディア、掲示板、メール、チャットアプリなど、オンラインのコミュニケーションツールを通じて行われます。
オンラインハラスメントには、以下のような行為が含まれます。
- インターネット上での誹謗中傷や名誉毀損
- 個人のプライバシーを侵害する行為、例えば個人情報の不正な公開
- ストーキング行為、オンライン上での執拗な追跡や監視
- コミュニティの特定の人を対象としたオンラインでのいじめ
リアルな世界と同様に深刻な影響を及ぼすことがあります。被害者は孤立感を感じたり、不安やうつ病を経験することもあります。
その15:リモートハラスメント
リモートハラスメントとは、テレワークやオンラインコミュニケーションの環境で発生する嫌がらせや不適切な行為を指します。リモート環境特有の問題として、オンライン会議中の不適切なコメント、過剰な連絡や監視、プライバシーの侵害、デジタルコミュニケーションを利用したパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどが含まれます。
リモートハラスメントは、物理的な距離があるために見過ごされがちですが、被害者にとっては大きな精神的ストレスを引き起こす可能性があります。
その16:メンタルヘルスハラスメント
メンタルヘルスハラスメントとは、人の精神的な健康状態や、精神疾患を持っていることを理由にした差別や嫌がらせを指します。精神的な問題を抱えている人々に対する誤解や偏見に基づくもので、被害者に対してさらなるストレスや孤立感を引き起こすことがあります。
メンタルヘルスハラスメントには、以下のような行為が含まれます。
- 精神疾患に関する不適切なジョークや侮辱
- 精神的な健康状態を理由にした仕事の機会や昇進の制限
- 精神疾患を持っていることの社会的なレッテル貼りや排除
- 精神疾患に対する無理解や偏見に基づく不適切なコメントや行動
メンタルハラスメントは加害者側の理解がなければ改善することは難しいです。個人事業主や小規模事業者として事業をされている方は、自分自身のメンタルを守るために取引停止などの対応が必要になるかもしれません。
その17:レイシャルハラスメント
レイシャルハラスメントは、人の肌の色や人種に基づく差別や嫌がらせを指します。特定の肌の色や民族的特徴を持つ人々に対する偏見やステレオタイプに根ざしていることが多いです。
レイシャルハラスメントには、以下のような行為が含まれます。
- 肌の色に関する不適切なコメントや質問
- 肌の色に基づく不適切なジョークや侮辱
- 人種や民族的背景に基づく仕事の割り当てや評価
- 肌の色や人種を理由にした社会的な排除や仲間外れにする行為
個人レベルでは、自己の偏見を見直し、異なる背景を持つ人々との対話を通じて相互理解を深めることが大切です。
その18:リライジャスハラスメント
リライジャスハラスメントは、個人の宗教的信念や宗教行為を理由にした差別や嫌がらせを指します。これには、特定の宗教を信じる人々への無理解や偏見に基づく言動、宗教的慣習を理由にした排除や不当な扱い、宗教に関する不適切な冗談や中傷などが含まれます。
リライジャスハラスメントが問題視される背景には、宗教に対する無知や偏見があります。
その19:ポリティカルハラスメント
ポリティカルハラスメントは、個人の政治的信条、意見、政党支持など政治に関する態度や行動を理由にした差別や嫌がらせのことを指します。
社会には様々な政治的意見が存在し、それぞれの人が自由に自分の考えを持つことは大切です。その意見の違いを理由に他人を攻撃したり、不利な扱いをすることは、相手の表現の自由や思想の自由を侵害する行為となり、ポリティカルハラスメントにあたります。
個人レベルでは、政治的な意見の違いを認め合い、相手を尊重する態度を持つことが大切です。
その20:アイデンティティハラスメント
アイデンティティハラスメントは、個人の性自認や性的指向、国籍、民族、宗教、障害の有無など、その人のアイデンティティに関わる特性を理由にした差別や嫌がらせのことを指します。
たとえば、同性愛者であること、特定の宗教に属していること、外国籍であることなどです。多様なアイデンティティに対して、否定的なコメントをしたり、冗談と称して不適切な言動を取ることが含まれます。
個人レベルでは、自分自身や他人のアイデンティティに関する言動に注意を払い、互いの違いを認め合う態度を持つことが大切です。
まとめ:自分がハラスメント行為をしないように振り返ろう!
この記事では、仕事上で起こり得るハラスメントを紹介しました。
最後に、この記事で紹介したハラスメントの種類を復習しましょう。
- その1:パワーハラスメント
- その2:セクシャルハラスメント
- その3:モラルハラスメント
- その4:ジェンダーハラスメント
- その5:エイジハラスメント
- その6:ルックスハラスメント
- その7:ソーシャルハラスメント
- その8:カスタマーハラスメント
- その8:デジタルハラスメント
- その9:言語ハラスメント
- その10:病気ハラスメント
- その11:能力ハラスメント
- その12:地域ハラスメント
- その13:ステルスハラスメント
- その14:オンラインハラスメント
- その15:リモートハラスメント
- その16:メンタルヘルスハラスメント
- その17:レイシャルハラスメント
- その18:リライジャスハラスメント
- その19:ポリティカルハラスメント
- その20:アイデンティティハラスメント
ハラスメントは相手が不快に思うことなので、これからも「〇〇ハラスメント」という言葉は増えていくかもしれません。
今後、ハラスメント行為を減らす、なくしていくためには、「相手を知ろうとする姿勢」「自分の言動の振り返り」が大切です。無意識のうちに相手にハラスメント行為をしていることもあります。
信頼関係を築いていくためには、自分も相手も気持ちよく接することが大前提となります。「自分は大丈夫だ」と自分の思い込みで相手を決めつけないように心がけてください。
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