コンプライアンスと聞くと大企業の問題のように思われがちですが、個人事業主や一人社長にとっても無視できないテーマです。
そこでこの記事では、コンプライアンスの基本から、個人事業主が特に注意すべき領域、実際の違反事例、そして今日からできる対策までをわかりやすく解説します。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
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コンプライアンスとは?

コンプライアンスは、単に「法律を守ること」ではなく、社会的なルールや取引先・顧客との信頼を守る行動全般を指します。
一人社長や個人事業主にとっては、コンプライアンス違反が信用失墜、最悪の場合は事業の存続につながります。契約違反や情報管理の不備は、小さな事業ほどダメージが大きく、取引停止や顧客離れを招くリスクがあります。
コンプライアンス違反と見なされる一例
- 契約書を交わさずに口約束で取引する
- 経費の水増しや、プライベートの支出を経費として計上する
- 顧客データをパソコンやスマホに無防備に保存する
- フリー素材やネット画像を無断で利用する
- SNSで誤解を招く発言や誇大表現をする
このほかにもコンプライアンス違反と見なされる例があります。「自分は大丈夫」と過信しすぎず、定期的に運営体制を見直したいものです。
コンプライアンス違反をするとどうなるのか
コンプライアンス違反をすると、
- 行政からの指導や処分
- 罰金や追徴課税
- 取引先との契約解除
などの対応がなされます。事案内容によっては、損害賠償請求や個人への法的責任も想定され、最悪の場合は廃業するリスクもあります。
個人事業主にコンプライアンス遵守が必要な理由

個人事業主は、「自分ひとりのビジネスだから」と高をくくりがちですが、実際には小規模だからこそコンプライアンス違反の影響が大きく出やすいです。
ここでは、個人事業主こそコンプライアンスを意識しておきたい理由を紹介します。
理由1:信用が直接ビジネスに直結する
まずは、信用はそのまま売上や継続的な取引につながり、もっとも重要な資産です。
大企業は一時的に信用を失ってもブランド力や規模で補えることもありますが、個人事業主は「この人だから依頼する」という信頼がなければ、仕事が途切れてしまいます。そのため、コンプライアンスを守り、信用を維持することが欠かせないでしょう。
コンプライアンス遵守は単なる義務ではなく、事業を維持・成長させるための「信用への投資」です。小規模だからこそ、信用の積み重ねが重要です。
理由2:小さなミスが大きな損失につながる
個人事業主は事業規模が小さいぶん、小さなミスでも経営に大きな影響を与える可能性があります。
大企業であれば内部監査や複数人のチェック体制でミスをカバーできますが、一人で事業を回す場合、確認漏れや管理不足がそのまま重大なトラブルにつながります。修正コストや信用失墜を一人で背負うことになります。
一人ですべてこなすにも限界があり、こなそうとすることでミスや不備につながります。コンプライアンスも意識しながら仕組み化することで保険的役割を作り、細部にも注意を払うことが大きな安心につながるでしょう。
理由3:補助金や融資の審査に影響する
コンプライアンスを守っていないと、補助金や融資の審査で不利になり、資金調達のチャンスを逃すかもしれません。
公的機関や金融機関は、信用できる事業者かどうかを重視します。税務処理の不備や契約関係のトラブル履歴があると、審査担当者からリスクの高い事業者と判断されやすく、申請が通りづらくなります。
個人事業主が気をつけたいコンプライアンス領域

事業規模が小さいぶん、個人事業主はすべてひとりで管理することが多く、思わぬところでコンプライアンス違反に触れてしまうリスクがあります。
特に以下の領域は、最低限押さえておきたいポイントです。
その1:税務・会計
税務・会計ルールを守ることは、コンプライアンスの基本です。
税務処理の不備は、追徴課税や延滞税といった金銭的な負担だけでなく、税務署からの信用低下にもつながります。小規模ビジネスだからといって軽視すると、事業継続に直結する大きなリスクを抱えることになりかねません。
- 領収書・請求書の保存
- 収入と支出の正確な記帳
- 経費の範囲を正しく理解・記帳する
- クラウド会計ソフトやExcelでの整理習慣
- 税理士や専門家への相談ルートを確保する
その2:契約
トラブルを防ぎ、安心した取引を続けるためには、契約が重要です。
口約束や曖昧な合意に頼ってしまうと、後から「言った、言わない」の問題に発展しやすく、報酬未払い、納期遅延、業務範囲の誤解などに直結します。契約書は、双方の権利義務を明文化しているので、自分の身を守る唯一の証拠にもなるでしょう。
- 契約書を取り交わす
- 業務範囲、納期、報酬などの契約内容を明文化する
- 支払条件(支払い時期、振込先)を確認・記載する
- 秘密保持契約(NDA)を締結する
- 契約書を適切に保管・管理する
その3:労務管理
労務管理を軽視すると、思わぬ法的トラブルや行政指導につながります。業務の一部を外注している場合には、必ず押さえておくべきコンプライアンスです。
事業規模にかかわらず、アルバイトや業務委託スタッフを雇っている場合には、労働基準法や社会保険のルールが適用されます。条件通知や勤務時間の管理を怠れば、労働基準監督署への通報や訴訟に発展するかもしれません。
- 雇用契約書・労働条件通知書の作成と交付
- 労働時間、残業、休憩時間の適正管理
- 最低賃金・割増賃金の遵守
- 社会保険・労働保険の加入手続き
- 業務委託と雇用の線引き
その4:情報セキュリティ
情報セキュリティ対策は、顧客や取引先からの信頼を守るために欠かせません。
個人情報や取引データの漏えいは信用を大きく損ない、損害賠償や契約解除に直結します。特に、小規模事業者は一度の情報トラブルが致命傷になりかねないでしょう。小さな取り組みでも実行していきたいものです。
- 顧客情報・取引先情報の適切な管理
- パスワードの定期的な更新、二段階認証の設定、管理
- 業務用と私用のデバイス・アカウントの分離
- ウイルス対策ソフト・ファイアウォールの導入
- 定期的なデータのバックアップ
その5:広告・表示
広告や表示に関するルールを守ることは、顧客の信頼を守り、不要なトラブルを避けることにつながります。
誇張表現や誤解を招く宣伝は、景品表示法や薬機法などに抵触する可能性があり、行政指導や罰金の対象になるだけでなく、信用失墜にも直結します。個人事業主の場合は信頼性がブランドそのものなので、広告表現の誤りはそのまま事業継続のリスクになりかねません。
- 誇大広告の禁止(景品表示法)
- 健康・美容分野における薬機法の遵守
- 特定商取引法に基づく表示
- 料金表示の明文化
- キャンペーンや割引の適正な条件提示
個人事業主ができるコンプライアンス対策

コンプライアンスは大企業だけでなく、個人事業主も事業を守るために遵守すべきことです。すべて完璧に対応できないとしても、事業規模に合わせて対策していくことが大切です。
以下では、すぐに実践できる具体的な方法を紹介します。
対策1:契約関連を整える
- 業務委託契約書・秘密保持契約(NDA)を必ず交わす
- 契約内容(業務範囲・納期・報酬・権利帰属)を明文化する
- 契約書を電子契約サービスやクラウドで整理・保管する
対策2:税務・会計を仕組み化する
- 日々の取引をクラウド会計ソフトで記録する
- 領収書・請求書をスキャンやクラウド保存で一元管理する
- 税理士や専門家に定期的に相談できるルートを確保する
対策3:労務管理の基本を押さえる
- 人を雇う際は必ず労働条件通知書を交付する
- 業務委託と雇用の線引きを理解して契約を使い分ける
- 給与明細や勤怠記録を残す
対策4:情報セキュリティを強化する
- 顧客データは暗号化やパスワード保護して管理する
- 二段階認証を導入し、業務用と私用デバイスを分ける
- 不要になったデータは削除・廃棄するルールを設ける
対策5:広告・表示を正しく行う
- 誇大表現を避け、根拠に基づいた内容を発信する
- 特定商取引法の表示義務を守る(事業者情報や返品条件など)
- SNSや広告でのPRは「広告」「PR」表記を忘れない
実際に起きたコンプライアンス違反の事例

実際に起こったコンプライアンス違反のリスク事例を紹介します。
事例1:しゃぶ葉 バイトテロ事件
2024年2月、株式会社すかいらーくレストランツが運営する飲食店「しゃぶ葉 伊奈店」のキッチン内で、廃棄予定だったホイップクリームを口に流し込む行為を撮影した動画がSNS上で拡散され、事態が発覚しました。
SNS上で拡散され、「不衛生」「軽視すぎる対応」「信用失墜」などの批判が相次ぎました。一部報道では、この不適切行為が業務上の義務違反、食品衛生法的リスク、景品表示法等の責任を問われる可能性があると言及されています。
▶ 株式会社すかいらーくレストランツ「当社従業員による不適切なお詫びについて」
事例2:東京証券取引所の職員によるインサイダー取引
2024年12月、東京証券取引所の職員が、業務中に知った未公開の重要情報を知ったうえで株式を売買・伝達したとして、金融商品取引法違反(内部者取引および情報伝達)の疑いで、東京地方検察庁に告発されました。
本件では、未公開情報を知る立場の者が情報を伝えること自体が違法行為となります。利益目的が立証されれば、刑事責任・行政責任ともに発生するため、倫理観・法令順守の観点からコンプライアンス違反と判断されます。
▶ 証券取引等監視委員会「東京証券取引所社員が関与した内部者取引事件の告発について」
事例3:NewsPicksにおける新聞記事等写真の無断使用
2024年2月、経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」を運営する株式会社ユーザーベースが、新聞記事や写真が無断で使用されていたことが日本新聞協会の指摘で発覚しました。
同社が調査した結果、他社が権利を持つ記事の見出しや写真を、利用許諾を得ずに掲載していたことが確認されました。一部の写真はトリミングや加工も行われており、「著作者の意図を守る権利(同一性保持権)」にまで抵触するケースがあったとされています。
▶ 株式会社ユーザーベース「NewsPicksの編成に関する、報道機関・メディアの皆様へのお詫びとお知らせ」
まとめ

コンプライアンスは法律を守るだけでなく、社会的ルールや信用を維持するための基盤です。大企業はもちろん、個人事業主も重要視していく必要があるでしょう。
実際の違反事例を見ても、「自分の規模なら大丈夫」と油断は禁物です。顧客や取引先との信頼を育てる投資として基本を押さえるだけで、安心して事業を続けるための強い土台になります。
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