「今の働き方を続けるのが辛い」と感じる人が増えています。しかし、働かなければ生活が立ち行かなくなると、心身に無理な働き方をしなければならないと感じているケースは多いです。
そこでこの記事では、働くペースをゆるやかに調整しながら生きる「マイクロリタイアメント」について、実践方法や成功のコツについて紹介します。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
めんどうな事務作業や雑務に追われていませんか?
みなとのオンライン事務代行がおすすめです
一般的な事務業務だけでなく、経理業務、ホームページ編集、SNS運用まで幅広くご依頼いただけます。
「こんな業務、お願いしても大丈夫かな?」というようなことがありましたら、お気軽にご相談ください!
マイクロリタイアメントとは?

マイクロリタイアメントは、完全に働くことをやめる「リタイア」ではなく、人生の途中で小さな休息期間や働き方の調整を取り入れる生き方を指します。FIREのように大きな資産を用意して一気に仕事を手放すのではありません。
たとえば、
- 週5日勤務から週3日勤務にする
- 育児や介護のタイミングで、仕事をペースダウンする
- 副業や在宅ワークを組み合わせながら働く時間・日数をゆるくする
という「働きながら休む」スタイルです。「仕事を続けたいけど、今の働き方はしんどい」と感じる方が、人生の余白を作れる働き方にシフトする取り組みです。
マイクロリタイアメントが注目される背景
マイクロリタイアメントが注目されている背景は、働き方に対する価値観の変化が影響しています。かつては「フルタイムで働き続けるのが当たり前」という前提が根強かったですが、働き方の多様化によって、その前提が揺らいでいます。
その要因は、
- 心身の負担の増加
- 人生100年時代という考え方
- 働く場所や時間の柔軟性の広がり
が挙げられます。
特に、長時間労働や人間関係のストレスに加えて、育児、介護、副業など、仕事以外の負担も増えているため、「フルタイムで働くのは難しい」と感じている人が増えています。実際、日本国内におけるうつ病・うつ状態の人が2013年の7.9%が2020年には17.3%と約2倍になっているとの調査結果もあり、精神疾患の患者が増えていることも看過できないでしょう。
マイクロリタイアメントとFIRE・サイドFIREとの違い
マイクロリタイアメントは、FIREやサイドFIREと似て非なる考え方で、目指すゴールも必要となる資金も大きく異なります。それぞれの違いをまとめると、以下のとおりです。
| 働き方 | 必要資産 | 労働量 | 働く目的 |
| マイクロリタイアメント | 特に定義なし | 調整しながら働く | 心身の余裕・人生のペースを整える |
| サイドFIRE | 1500万〜4000万円程度 | 収入目的で少し働く | 投資収入を補うため |
| FIRE | 5000万〜1億円など高額 | 働かない | 完全に会社を辞める |
FIREが完全リタイア、サイドFIREが投資収入の補填として労働するのに対し、マイクロリタイアメントは、働くことが前提にあることです。また、FIREやサイドFIREをするために必要なまとまった資産は必要ありません。
そのため、現在の生活で心身の負担が大きい人が、その人なりのワークライフバランスを実現させる選択肢のひとつになり得るでしょう。
マイクロリタイアメントのメリット・デメリット

マイクロリタイアメントには、メリットもデメリットもあります。
ここでは、実際に検討するうえで押さえておきたいメリットとデメリットを整理すると、以下のとおりです。
マイクロリタイアメントのメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 心身の回復につながり、バーンアウトを防げる 家事・育児・生活とのバランスが取りやすくなる 継続的に収入が得られ、社会とのつながりを維持できる 自分のペースで働く「持続可能な働き方」が実現できる | 収入が減る 社会保険・税金負担が変動する キャリアの停滞や評価が下がる可能性が高くなる 計画が甘いと、貯金を切り崩してかえって不安が増す 周囲に理解されにくく、孤立しやすい |
マイクロリタイアメントは、FIREやサイドFIREのように大きな資産がなくても始められる「現実的で柔軟な働き方」です。ただし、収入、税金、キャリアへの影響もあるため、生活全体を見直しながら進めることが大切です。
マイクロリタイアメントの注意点

マイクロリタイアメントは、心身の負担をやわらながら働き続けるための選択肢のひとつです。しかし、実践するための注意点を押さえておかないと、期待していた効果を感じられず、逆に不安が大きくなることもあります。
その1:マイクロリタイアメント後のシミュレーション
働く時間を減らせば、当然ながら収入も減ります。そのため、まずは、固定費、生活費、貯金額を具体的に把握し、収入が減っても生活ができるのかシミュレーションが必須です。
2025年時点では物価高により生活コストが上がっているので、今後も生活コストが上がるかもしれないとの前提で、ワークライフバランスを検討するのが無難です。マイクロリタイアメントを踏み切る前に、半年~1年くらいは家計簿をつけて生活コストを可視化するのがおすすめです。
その2:社会保険・税金の負担額の変動
働く時間を減らすと、国民健康保険、国民年金、住民税、会社員なら社会保険の加入条件の変更にともない、負担額が変わります。働く時間が減るから納める社会保険料や税金が減る、とも限りません。
特に、一人社長やフリーランスの場合は、
- どの収入ラインを超えると、税負担が増えるのか
- どこまで抑えると保険料が下がるのか
を把握したうえで、仕事量やペースを考えることが検討できるでしょう。
その3:不安や問題の根本的解決にならない
マイクロリタイアメントによって、心身の負担を軽くできても、抱えている問題の根本的解決になるとは限りません。家族構成によっては、生活費だけでなく、養育費や介護費が必要になり、経済問題を解消しなければ問題解決にならないケースもあるからです。
働く時間・量を減らせば、収入が減ったり、キャリアが停滞する不安も大きくなることがストレスになり、状態によっては精神疾患になるリスクもあります。マイクロリタイアメントの期間中は、メンタル面のケアやスキルアップのための学習も必要になるでしょう。
その4:周囲の価値観に振り回されない「自分軸づくり」
マイクロリタイアメントはまだマイナーな働き方のため、「もっと働けるのに甘えている」「責任感がない」と思われる場合があります。それによって、自己肯定感を下げるおそれがあり、あらかじめ「自分軸」をはっきりさせておくことがおすすめです。
自分軸として決めておきたいのが、「マイクロリタイアメントの目的」です。自分なりにそれを選ぶべき理由があるので、目的とゴールを明らかにしておくだけでも、心が折れそうになったときの支えになるでしょう。
その5:心身を回復させるための「習慣づくり」
マイクロリタイアメント後の生活を想定して、心身を回復・維持するための「習慣づくり」も同時進行したいものです。
回復を実感するためには、
- 睡眠
- バランスの取れた食事
- 適度な運動
- 趣味や創作活動などのリフレッシュ
が必要です。心身の回復には時間がかかるので、心身に良いことを続けることが回復の近道となるでしょう。
マイクロリタイアメントを実現するための5ステップ

マイクロリタイアメントは、行き当たりばったりで始めると不安が大きくなってしまうため、計画を立てて段階的に準備することが必要です。
ここでは、誰でも実勢しやすい5つのステップに分けて解説します。
まずは、現状を正しく把握することです。
- 1ヶ月の生活費
- 固定費(家賃、生活費、保険、教育費など)
- 現在の収入(本業、副業)
これらを可視化すると、「どのラインまで収入を下げても生活が維持できるか」がわかり、マイクロリタイアメント後の生活をシミュレーションしやすくなります。
次に、どのくらいのペースで仕事ができるのかを明確にしましょう。
家族や個人の事情を考慮して、勤務日数と時間を割り出します。繁忙期だけ働き方を変えたり、子供の成長に合わせてペースを調整したり、理想のペースを具体的にすることで、就業形態も検討しやすくなります。
マイクロリタイアメントは、働く時間を減らすだけでなく、無理なく稼ぐ仕組みを持っておくことも検討しましょう。
勤務先を2つする、単価の見直し、副業、コンテンツ販売、投資などが挙げられます。複数の収入源を持つことで、取引量が減った場合でも生活費が安定しやすいです。
マイクロリタイアメントを続けるためには、生活費の負担を軽くする工夫も欠かせません。生活費を抑えることで、少ない収入でも生活ができるようになります。
ひとり親の場合は児童手当や児童扶養手当など公的支援の申請、事業をしている場合は補助金や助成金の申請も検討できるでしょう。
マイクロリタイアメントの期間中は、フェーズに合わせて働き方を見直しましょう。
子供の成長、収入の増減、体調の変化、仕事量の波など、自分でコントロールできないことも多いです。それらは一定ではないので、定期的に見直して調整することで、マイクロリタイアメントを維持しましょう。
マイクロリタイアメントに向いている人・向いていない人

マイクロリタイアメントは、誰にでも合う働き方ではありません。
特に「心身の負担を減らしたい」「働き方を調整したい」というニーズがある人にはメリットがありますが、逆にこの働き方がストレスになる人もいます。わかりやすくまとめると以下のとおりです。
マイクロリタイアメントに向いている人・向いていない人
| マイクロリタイアメントに向いている人 | マイクロリタイアメントに向いていない人 |
| ・働きすぎによる疲労・メンタル負担がある ・完全リタイアせず働きながら休みたい ・自分のペースで働きたい・生活したい ・学び直しや副業に時間を使いたい ・収入の最適化や家計管理ができる | ・収入が減ることに強い不安を覚える ・周囲の評価や働き方に影響されやすい ・計画を立てるのが苦手 ・仕事を休む/減らすことに罪悪感を覚える ・キャリアを途切れさせたくない |
キャリアや収入にある程度の妥協をして、心身を守りつつ、仕事とプライベートを両立した働き方を望む方にとって、マイクロリタイアメントの実践は選択肢のひとつとなるでしょう。それが難しい場合でも、収入の増減が少なく、生活に支障をきたさない仕組みを作っておくことで、働き方の選択肢が広がるのではないでしょうか。
マイクロリタイアメントの4つの事例

マイクロリタイアメントを検討するにしても、働き方のイメージがつきづらいケースがあります。ここでは、実現しやすい4つのスタイルを紹介します。
事例1:週3勤務+副業
週3勤務とスキマ時間で副業する働き方は、フルタイムで働くと疲労が蓄積しやすい人や、子育てとの両立で時間が足りない人に向いている方法です。
この組み合わせは、心身の負担を最小限にして一定の収入を得られ、かつ残りの時間を副業に充てることで収入の補填をしつつ、キャリアの幅を広げるきっかけになります。将来を見据えて、独立の基盤を作ることにつながり、戦略的に収入アップを狙いやすいでしょう。
事例2:育児期のワークシェア
出産・育児期は、必然的に女性のフルタイムが難しくなる時期です。この期間だけ働く時間を少なくし、チームで仕事を分担するワークシェアは、マイクロリタイアメントと親和性の高い働き方になるでしょう。
たとえば、
- 1日4~5時間勤務
- 週3~4日だけ出勤する
- 在宅ワークを中心にする
などの柔軟な働き方に切り替えることで、子供の成長に合わせて働く時間・場所を調整できる点が魅力的な働き方です。
事例3:半年休んで半年休む(サバティカル風)
近年注目されているのが「半年働き・半年休む」というマイクロリタイアメントです。
休んでいる期間は、
- 旅をする
- 学び直しや資格取得する
- 子供との時間としっかり確保する
- 心身の回復のためにゆっくりと過ごす
など、人生の中休みを作ることができます。もちろん収入の波はありますが、貯蓄、固定費の最適化、副業集の確保などの組み合わせで実現可能です。
事例4:マイクロ法人+個人事業主で調整する
一人社長や個人事業主に増えているのが、マイクロ法人と個人事業主の二刀流で働き方を整えるスタイルです。
たとえば、
- 法人では少ない稼働で稼働で収入を安定させる
- 個人事業主では、無理のない範囲で受注する
- 役員報酬を最低限にして社会保険料を調整する
といった運用が可能です。特に、体調の波がある人や、在宅ワークを中心にしたい人にとっては、「働きすぎないための仕組み」として機能しやすいです。
マイクロリタイアメントを成功させるコツ

マイクロリタイアメントは、ただ働く時間・量を減らすのではなく、収入、生活、メンタルのバランスを整えながら、「働きすぎない仕組み」を作ることが成功のカギになります。
ここでは、マイクロリタイアメントを実践するためのコツをご紹介します。
その1:不安をひとつでも多く解消する
生活費の把握と収入を予測して、起こり得る不安をひとつでも多く解消しておきましょう。
マイクロリタイアメントでは、収入が減る、または停滞するイメージが強いです。しかし、固定費と生活費を把握し、貯金と副収入でどこまで補うかを可視化すると、不安が浮き彫りになってあらかじめ対策できて余計な心配をしなくて済みます。
その2:収入源を複数持つ
働き方をゆるめるためには、収入源を複数作って依存先を分散することが大切です。
たとえば、
- 単価を見直して、時間あたりの収益を上げる
- 在宅でできる副業を組み合わせる
- コンテンツ販売で「仕組み型収入」を作る
- 小さくても投資の積み立てを続ける
が検討できるでしょう。収入の柱が増えるほど、働く量が減っても生活が不安定になりにくくなります。
その3:心身の回復につながる「余白」を作る
マイクロリタイアメントは「生き方の調整」です。
ただ休むだけでは体調が整わないことも多いです。睡眠、食事、運動、人とのつながりなど、自分を回復させる行動を生活に組み込みましょう。
まとめ

マイクロリタイアメントは、資産たくさん用意しなくても、仕事のペースを緩やかに整える働き方です。
重要なのは、働く時間を減らすことと同時に、生活費の把握と収入源の複線化をして、できるだけ生活に支障のない仕組みを作ることです。がんばり続ける人生から、自分のペースで働く人生へ切り替える手段として、検討してみてはいかがでしょうか。
みなとのオンライン事務代行がおすすめです

みなとのオンライン事務代行は、神奈川県横浜市を拠点としたオンライン事務代行サービスです。
副業、個人事業主、一人社長、小規模事業者様にご利用いただいております。もちろん、中小企業経営者の方からのご依頼も大歓迎です。
初回のご相談は、オンラインにて無料で承っております。「こんな業務をお願いしたいんだけど、依頼できる?」といったご相談も承れますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。


コメント