近年、「コンプライアンス」という言葉を耳にする機会が増え、それにともない「コンプライアンスと言われすぎて、厳しくなったのではないか」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、コンプライアンスが厳しくなった理由、要員、影響と、個人事業主が実践できる対応策、今後の見通しについて分かりやすく解説します。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
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なぜコンプライアンスは厳しくなったのか

コンプライアンスは、単に法律を守るだけでなく、社会的な規範、倫理、企業としての責任を果たすことを含んだ広い概念です。
近年、このコンプライアンスはこれまで以上に厳格に求められるようになっています。その背景には、社会的・経済的な要因がありますので押さえていきましょう。
要因1:過去の不祥事による社会的要請
まずは、過去に起きた大企業や行政の不祥事です。
2010年代頃から、大手企業によるコンプライアンス違反の事案がニュースになることが増えました。特に、2015年に発生した電通の新入社員が過労自殺をした事件は、当時社会問題としてニュースやSNSで社会的に注目を集めました。
こうしたニュースが取り上げられ続け、パワハラやセクハラといったハラスメントもコンプライアンス違反に当てはまると知られるようになりました。「一部の企業だけの問題」ではなく、小規模事業者や小さな会社でも「同じことを起こさない仕組みを持つべき」との理解にもつながっていきました。
要因2:法改正や規制の厳格化
次に、コンプライアンスに関する法律や規則が強化されたことです。
たとえば、近年の主な改正や新制度は以下のとおりです。
| 法律・制度名 | 内容 |
| 個人情報保護法 | 2017年、2020年、2022年と段階的に改正され、情報を扱うすべての事業者が対象になった。個人事業主や小規模事業者も例外ではなくなった。 |
| 労働基準法・働き方改革関連法 | 残業時間の上限規制、有給休暇の取得義務化など、労務管理のルールが厳格化した。 |
| インボイス制度 | 取引の透明性を高めるため、請求書の形式や税務処理がより厳格になった。 |
| 電子帳簿保存法の改正 | 領収書や請求書の電子保存ルールが細かくなり、会計処理でも注意が必要になった。 |
このように、法律や規則の厳格化によって、個人事業主や小規模事業者も「知らなかった」では済まされない時代になりました。定期的に情報収集をして最新情報にアップデートしつつ、必要に応じてすみやかに対応することが欠かせないでしょう。
要因3:グローバル基準の影響
国際的な基準や価値観へ合わせる動きも挙げられるでしょう。
グローバル化にともなう海外取引の増加にともない、世界標準に合わせる必要が出てきました。環境への配慮、人権意識、情報管理のルールはグローバル化には欠かせず、日本の企業や個人事業主も例外ではありません。
ビジネスにおいて世界で戦っていくためには、法律や規則面でも世界ルールのレベルを満たすことが必須と言えるでしょう。そのような意味で、世界標準を満たすコンプライアンス対応が欠かせません。
要因4:SNS時代の透明性と監視の強化
SNSの普及によって、不祥事や不適切な行動が瞬時に拡散・炎上されるようになったことも、コンプライアンスが厳格化する一因になったと言えるでしょう。
いったんSNSで炎上すると、店舗・企業だけでなく、コンプライアンス違反をした人物の氏名、住所、経歴などの個人情報が瞬時にさらされるようになりました。このような情報の透明性が強く求められるようになった社会では、いっそうリスク回避のための慎重な行動が求められるようになったといっても過言ではありません。
コンプライアンス強化が企業・個人に与える影響

コンプライアンスの強化は、すべての事業者にとって無視できないテーマとなりつつあります。法律、規則、社会規範が厳しくなった現在、事業活動や日常の取引にさまざまな影響が及ぼします。
ここでは主な影響を整理していきます。
その1:信頼性の確保がより重要になる
コンプライアンスの遵守は、顧客や取引先からの信頼を得るためには不可欠です。
過去にコンプライアンス違反の事例が報道されるようになった現在、コンプライアンスの遵守は顧客や取引先からの信頼を勝ち取るには必要です。ルールをしっかり守っている姿勢で「安心して任せられる事業者」として、事業を続けていきたいですね。
その2:コストや業務負担の増加
コンプライアンス強化は、新しい仕組みづくりやルール対応によって、コストや業務の負担が増えてしまいます。
法改正や規制に対応するためには、契約書の整備、システム導入、情報管理ルールの見直しなどが必要になります。これらは時間と費用を伴いますが、対応を怠ると取引先から条件を満たしていないと判断され、損失になるリスクもあります。
その3:法的リスク回避の意識が強まる
コンプライアンスを強化するよりも先に、法的リスクを避ける意識を持つことの方がいっそう重要でしょう。
一度でも違反すれば罰則や行政指導を受けるだけでなく、社会的信用を大きく失います。法的リスクを減らすことが、事業を安定して続ける条件になります。法的リスクを避けるために日頃からルールを確認し、コンプライアンスを含めて必要な知識を学んでいくことが欠かせません。
個人事業主ができるコンプライアンスへの対応策

コンプライアンスの遵守は、大企業だけでなく、個人事業主、一人社長、小規模事業者にとっても重要です。ここでは、個人事業主がすぐに実践できる具体的な対応策をご紹介します。
対応策1:契約書を必ず取り交わす
業務を引き受ける際には、口約束ではなく、かならず契約書を取り交わしましょう。
契約内容を明確にしておくことで、後から「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、双方の責任範囲をはっきりさせることができます。納期や報酬の支払い条件も明記しておくことで、相手に支払遅延金を正当に請求することもできます。
契約書は「自分を守るための盾」と言っても過言ではありません。小さな仕事でも、必ず書面に残す習慣をつけましょう。
対応策2:個人情報やデータを適切に管理する
顧客や取引先の個人情報は厳重に管理し、漏えいを防ぐことが欠かせません。
情報に限ったことではありませんが、業務に関わるすべての管理がずさんだと、そこから漏えいやミスにつながり信用を一瞬で失います。取引停止や法的責任につながり、最悪の場合は廃業に至る可能性もあるため、適切に保管しましょう。
対応策3:SNSや発信に気をつける
SNSなどの発信内容は、自分の評判や事業の信用に直結するため注意が必要です。
近年、SNSへの投稿による炎上が頻発しており、その多くがその場のノリや「自分は大丈夫」という慢心による投稿です。フォロワー数の多さに関係なく、不用意な発言や誤解を招く投稿は、一瞬で拡散されて信用を落とすリスクがあります。投稿内容は適切かを確認しつつ、つねに「見られている」意識で発信していきたいものです。
対応策4:法改正や制度変更を定期的にチェックする
最新の法律や制度変更を定期的に確認し、早目に対応する心がけが大切です。
法改正は突然実施されることも多く、対応が遅れると取引に支障が出たり、罰則を受けるリスクがあります。直近で実施されたインボイス制度や電子帳簿保存法の改正は、個人事業主や正気の事業者に大きな影響を与えたことが知られています。ニュースや税理士の情報発信を定期的にチェックしましょう。
今後はさらにコンプライアンスが厳しくなるのか

個人的には、今後コンプライアンスはさらに厳しくなると予測していて、世界情勢などを踏まえても、この見立ては適切でしょう。ビジネスの規模に関係なく、知識として取り入れておいて不足することはありませんね。
理由1:国際・国内の規制が強化している
EUでは、AI規制(AI Act)が2024年に発効され、2025~2026年にかけて順次義務化領域が広がるとされています。生成AIや高リスクAIへの要求は段階的に適用される見込みで、グローバルに取引する企業やフリーランスにも影響が及ぶと推測されています。
理由2:ESG/サステナ開示の拡大
近年、企業には売り上げや利益といった「お金の数字」だけでなく、環境、社会、ガバナンスなどESGの情報を後悔することも求められています。
国際的にはIFRS財団のISSBが作った基準(IFRS S1/S2)が2024年から世界で使われ始めました。日本でも同じ流れに対応するために、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が2024年に草案を出し、2025年に国内版ルールを発表しています。
この動きは、上場企業に限らず、その取引先のサプライヤーにも拡大するでしょう。つまり、大企業と取引する中小企業やフリーランスにも、「環境への配慮をどうしているか」「情報管理をどうしているか」といった開示を求められるケースが増えていく可能性があります。
理由3:サプライチェーン全体への要求水準の引き上げ
ヨーロッパでは、「企業は、自分の会社だけでなく、取引先の人権や環境への取り組みまで確認しなければならない」と言うルールが広がっています。
一言でいえば、海外と取引する企業は、自分の会社だけでなく、取引先にも「人権や環境に配慮した経営」を求められるようになっていて、その影響が中小企業や個人事業主にも及んでいます。海外の流れを見ると、たとえば、EUの新しいルール「CSDDD」やドイツの法律「LkSG」が挙げられます。
理由4:国内制度も「網羅・厳格」の方向へ進んでいる
日本では、個人情報保護法の改正が2022年に全面施行され、電子帳簿保存法では電子取引データの電子保存が2024年1月1日から原則必須となりました。インボイス制度も2023年10月に開始し、請求書・記録の正確性と保存要件が厳格化しています。さらに内部通報制度も保護範囲が広がり、2025年改正では個人事業主も対応になっています。
理由5:世間の見解を考慮して後戻りしにくい状況
コンプライアンス強化の流れは、法律や規制の厳格化だけでなく、社会全体の常識として定着しつつあり、後戻りが難しくなっています。
消費者や投資家は、企業に対して「人権を尊重しているか」「環境に配慮しているか」「透明性があるか」といった観点で厳しく目を向けています。万が一問題が発覚すれば、SNSやメディアを通じて瞬時に広まり、企業や個人事業主のブランド力や信用力は地に落ちてしまうでしょう。
国際的にも、ESG投資やサスティナビリティの評価が当たり前になっており、これに背を向けると資金調達や取引の機会を逃すリスクがあります。このように、社会が求める水準が上がってしまい、今さら規制を緩めたり意識を下げたりすることは、実質的に不可能なのです。
まとめ

コンプライアンスが厳しくなった背景には、不祥事を受けた社会的陽性、法改正、国際基準、SNS時代の監視強化があります。これにより、大企業だけでなく個人事業主や一人社長にも、高いルール順守が求められるようになりました。
今後も、国際規制や社会の期待から後戻りするとは考えにくく、さらに厳格化していくと推測されます。コンプライアンスは「守るべき義務」であると同時に、「信頼を得て事業を続けるための戦略」でもあると言えるでしょう。
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