マイクロ法人は、節税や社会保険料の削減の手段のひとつとして注目を集めています。しかし、実際に設立して「思ったのと違っていた」と後悔する声も少なくありません。
そこでこの記事では、マイクロ法人を設立して後悔した理由や、よくある失敗例、設立前に確認すべきポイントをわかりやすく解説します。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
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マイクロ法人を設立して後悔する理由5選

マイクロ法人の設立にあたって、事前にしっかり準備していたつもりでも、見落としや誤解によって公開につながるケースがあります。これからマイクロ法人の設立を考えている方は、ぜひチェックしてみてください。
理由1:節税メリットが思ったより少なかった
マイクロ法人を設立しても、法人設立にともなう固定費や手間などで、節税で得られるメリットが薄れてしまうことがあります。
たとえば、役員報酬を低く設定すれば、所得税や住民税の節税につながるでしょう。しかし、法人住民税の均等割りで最低7万円はかかりますし、それ以外にも決算書の作成費、税理士への報酬など、法人維持にかかるコストは意外に多いです。
理由2:社会保険料の仕組みを誤解していた
マイクロ法人を設立すると、社会保険への強制加入があるために、社会保険料の負担が大きくなるかもしれません。
たとえば、会社員時代に比べて年収を大きく下げたにもかかわらず、役員報酬に基づく厚生年金と社会保険への加入が義務付けられ、年間数万円単位の保険料が発生します。法人と個人の両方で負担が生じるため、思っていた以上に支出が増えるかもしれません。
ただし、会社員として働きながらマイクロ法人を設立する場合、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出しなければ、会社員の方で社会保険料を支払い、マイクロ法人では社会保険料を支払わなくてもいいという申告自体はできます。しかし、年金事務所からの対応やその証明をするための書類提出で手間がかかってしまうでしょう。
理由3:手続き・会計処理が煩雑だった
法人化によって必要な手続きや帳簿管理が大幅に増えて、日々の事務作業や会計処理に思いのほか時間と労力がかかってしまいます。
たとえば、法人の場合は、設立登記、税務署への届出、役所への書類提出、銀行口座の開設、社会保険関連の対応など、多くの事務作業が発生します。年に一度の法人決算では、貸借対照表や損益計算書と言った財務諸表の作成が求められ、会計知識がなければ税理士に依頼する必要も出てきます。
理由4:税理士費用や事務代行費がかさんだ
マイクロ法人法人を運営する上で、税理士や事務代行サービスにかかる費用が想像以上に高くつき、結果的に後悔するケースもあります。
たとえば、法人には年1回の決算申告や、法人住民税・法人事業税の申告、消費税の計算などが発生します。これらを正確に処理するには専門知識が必要となり、税理士に依頼すれば月額顧問料や決算申告費用として年間10〜20万円以上かかることも珍しくありません。
理由5:副業レベルでは割に合わなかった
マイクロ法人は、一定以上の収益が見込める事業でなければ、かえって負担の方が大きくなり「割に合わない」と感じてしまうことがあります。
たとえば、副業として月3〜5万円程度の収益しかない事業にマイクロ法人を使った場合、法人住民税の均等割(年7万円)、税理士費用、社会保険料(加入する場合)などを考慮すると、利益はほとんど残らない可能性があります。それどころか、法人の運営にかかる時間や精神的な負担が増え、「こんなに面倒なら個人事業のままでよかった」と感じることもあるでしょう。
マイクロ法人が向いていない人の特徴

マイクロ法人は、正しく活用すれば節税や社会保険料の調整などに役立つ手段ですが、すべての人に適しているわけではありません。
ここでは、マイクロ法人の設立を慎重に検討すべき「向いていない人」の特徴を紹介します。該当する項目が多い場合は、まずは個人事業主としての運営を続ける方が賢明かもしれません。
特徴1:安定した収入がない
マイクロ法人は、一定の収益が継続して見込める人でなければ、設立後に経済的な負担を感じやすくなります。
副業やフリーランスの活動で収入が月によってバラつきがあり、年間の売上が100万円にも満たない場合、それだけで法人の維持費をまかなうのは困難です。収益がゼロでも発生する均等割(年7万円)や、決算に必要な税理士費用を支払うことで、赤字が続き、精神的にも経済的にも重荷となる可能性があります。
特徴2:会計・税務知識に乏しいが外注もしたくない
会計や税務の知識がないにもかかわらず、外注もしたくないという人には、マイクロ法人の運営はハードルが高く感じられるでしょう。
法人では毎月の仕訳処理、預金出納帳の管理、決算書の作成、法人税・消費税の申告など、やるべきことが増えます。しかも、これらを間違えると税務署からの指摘や罰則の対象になることも。にもかかわらず、「税理士費用を払いたくない」「すべて自分でやりたい」と考えてしまうと、手間とストレスだけが増え、事業そのものに集中できなくなります。
特徴3:社会保険の負担を軽視している
社会保険料の仕組みを正しく理解せずに法人を設立すると、後々その負担の大きさに驚くことになります。
役員報酬を月10万円に設定したとしても、健康保険・厚生年金あわせて2万円以上の保険料が発生します。そのうち約半額を法人が負担するため、法人と個人の両方から資金が出ていく構造です。年間で見れば20万円〜30万円以上の支出になることもあり、「節税どころか、手取りが減った」と感じてしまうケースも珍しくありません。
特徴4:本業の給与所得が高い会社員
本業の給与収入がすでに高い会社員にとっては、マイクロ法人を設立しても得られる節税効果が限定的で、かえって負担が増えることもあります。
副業の収入を法人化した場合でも、本業の給与が高いと所得全体が高水準で維持されるため、住民税や健康保険料の軽減効果は小さくなります。加えて、法人を通じて受け取る報酬に対しても役員報酬として社会保険料の支払いが必要になる可能性があり、節税どころかトータルの負担が増えることもあります。
マイクロ法人を設立して後悔しないためにすることは?

マイクロ法人には確かに節税や保険料対策などのメリットがありますが、それはあくまで「正しく理解し、準備した上で活用できた場合」に限られます。後悔しないためには、事前にリスクと向き合い、自分にとって本当にメリットのある形かどうかを見極めておく必要があります。
ここでは、マイクロ法人を始める前に必ず確認しておきたい5つのポイントをご紹介します。
その1:節税額とコストのシミュレーション
マイクロ法人を設立する前にまず行うべきは、「どれくらい節税できるのか」と「維持にどれだけコストがかかるのか」の具体的なシミュレーションです。
法人化によって所得税や住民税が年間10万円減る見込みだったとしても、法人住民税の均等割(約7万円)、税理士報酬(年10万円前後)、登記や口座維持の事務コストを含めると、年間20万円以上の固定費が発生します。結果として、節税どころか手取りが減ることにもなりかねません。
このように、メリットだけに目を向けるのではなく、「節税効果 ー 維持コスト」= 実質的な利益という視点で冷静に数字を比較することが、後悔しない第一歩です。電卓とエクセルを使って、自分の事業規模に見合った判断をしましょう。
その2:社会保険や年金に与える影響
マイクロ法人を設立する際には、社会保険と年金制度への影響を事前にしっかり確認することが欠かせません。
会社員として勤務しながらマイクロ法人を設立する場合、法人側でも報酬を受け取ると二重加入のリスクが生じたり、扶養から外れる可能性があります。また、国民年金から厚生年金に切り替わることで将来の年金受給額が増える一方、毎月の保険料が大きくなり、手取り収入が減ってしまうこともあります。
その3:確定申告や法人会計の流れの理解度
マイクロ法人を理解する前に、法人特有の会計処理や申告の流れを理解しておきましょう。
法人では、年に一度決算が必須です。「損益計算書」「貸借対照表」などの財務諸表を作成し、それらを基に、法人税、消費税、法人住民税などを申告・納税します。これに加えて、決算期の設定、役員報酬の扱い、源泉徴収の義務など、個人事業にはない業務が増えます。法人の会計と税務は、やりながら覚えるにはハードルが高すぎる面があります。
その4:法人を維持できる事業収入
法人を維持するのに十分な事業収入が見込めるかを必ず確認しておきましょう。法人は、毎年一定の維持コストが発生します。安定した収益がなければ、赤字経営になってしまうためです。
法人住民税の均等割り(年間約7万円)は、利益の有無に関係なく支払う必要があります。これに加えて、税理士への決算以来費、会計ソフトの利用料、銀行口座維持費など、少なくとも固定費が10万円~20万円ほどかかります。こうしたコストに対して事業収入が追い付かないと、結局破損だったと感じるかもしれません。
その5:将来的な法人の出口戦略
最後に、将来的に、その法人をどうするか「出口戦略」を考えておきましょう。法人は、設立よりも解散や清算に手間も費用もかかります。行き当たりばったりで運営を続けると、いざというときに身動きが取れなくなるリスクがあります。
副業の規模が縮小したり、本業に専念するために法人をやめたいと考えても、解散には定款変更や清算人の選任、法務局への登記、税務署への各種届出など、複数の手続きが必要です。専門家に依頼すれば数万円〜十数万円の費用がかかることもあります。
場合によっては、解散後に税務調査や書類保管の義務が残るケースもあり、予想以上に手続きが煩雑になるかもしれません。
まとめ

マイクロ法人は、正しく使えば大きな武器になりますが、準備不足で始めると、負担が増えるだけになりかねません。
節税などメリットだけにとらわれて設立するのは危険です。焦らず、自分の収入やライフスタイル、今後の働き方と照らし合わせて「本当に必要なのか?」を冷静に考えるところから始めましょう。
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