マイクロ法人は、節税や社会保険料の最適化を目的に設立されるケースが多く、「赤字=失敗」ととらえて不安になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には戦略的な赤字、初期投資による一時的な赤字はよくあることです。
そこでこの記事では、「マイクロ法人が赤字になったらどうなるのか?」という疑問から、税務上の扱いや節税効果、会計処理の注意点、赤字が続く場合の判断基準までをわかりやすく解説します。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
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マイクロ法人が赤字になるとどうなる?

赤字決算になった場合、多くの人が「税務署に目をつけられるのでは?」「廃業すべきなのか?」と不安を感じます。しかし、法人にとって赤字は決して珍しいことではなく、適切な対応をすれば問題ありません。
ここでは、赤字の影響について3つの視点から解説します。
赤字でも法人は継続できる
マイクロ法人は、赤字決算でも問題なく継続できます。
法律上、法人に「利益を出し続けなければならない」という義務はありません。赤字が出たからといって、自動的に解散やペナルティが課されるわけではなく、法人住民税などの必要なコストを支払い続けていれば、事業は継続できます。
マイクロ法人は、節税や資産管理などを目的とした「維持するだけでも意味がある法人」として運営されているケースが多く、必ずしも黒字を目指す必要はありません。
赤字でも税金はゼロにならない
マイクロ法人が赤字決算でも、支払うべき税金はゼロになりません。
法人には、利益の有無にかかわらず課される「法人住民税の均等割」という固定費があります。これは、事業を行っていなくても、法人として存在する限りは毎年必ず発生する税金で、多くの自治体で最低でも7万円前後が必要です。
税務署に怪しまれるのは「不自然な赤字」
マイクロ法人が赤字でも、正当な理由があれば問題ありません。ただし、「不自然な赤字」は、税務署に疑われるリスクがあります。
赤字が意図的に作られたものであったり、経費の使い方に不透明さがあると、税務署は「節税ではなく脱税の可能性がある」と判断することがあります。特に、プライベートな支出を法人経費にしている、毎年決まったように赤字を出している、帳簿の整合性が取れていないといったケースは、税務調査の対象になりやすいでしょう。
赤字でも節税になるって本当?

赤字でも、適切に設計されたマイクロ法人であれば、節税効果は得られるでしょう。
マイクロ法人の節税の本質は、法人全体の黒字化ではありません。役員報酬として個人に支払われる給与所得を活用し、所得税や社会保険料の負担を軽減する点にあります。そのため、法人決算が赤字であっても、法人から役員報酬を支給することで、個人の所得税をコントロールできるため、結果的に全体の税負担を抑えることができるのです。
マイクロ法人では、「法人を黒字化すること」よりも、「法人と個人のトータルでの税負担を下げること」が重要です。赤字決算でも、戦略的に設計された運用であれば、節税という目的を十分に果たすことができるでしょう。
赤字のときの会計処理と申告の注意点

マイクロ法人が赤字決算になった場合でも、会計処理と税務申告は必ず行わなければなりません。赤字だからといって処理を怠ると、後々の税務調査や信用問題につながる可能性があります。
ここでは、赤字時に押さえておくべき基本的なポイントを3つご紹介します。
注意点1:損失は「繰越控除」できる
マイクロ法人が赤字になっても、その損失は将来の黒字と相殺できる「繰越控除」を使えば、有利に活用できます。
「欠損金の繰越控除」は、赤字(欠損金)を翌期以降に繰り越し、将来の黒字と相殺して法人税を軽減できる制度です。青色申告をしている法人が対象で、最長10年間の繰り越しができます。つまり、赤字で終わった決算期も無駄にならず、次期以降の節税につながるかもしれません。
注意点2:赤字でも法人税申告は必要
たとえ赤字決算で法人税が発生しなくても、法人税の申告は必ず行う必要があります。
法人は、利益の有無にかかわらず、毎事業年度ごとに法人税の申告義務があります。赤字だからと言って申告を省略してしまうと、青色申告の承認が取り消されたり、税務署から無申告と見なされたりするかもしれません。法人としての信頼性にもかかわるため、赤字であっても適切な手続きを怠らないように気を付けましょう。
注意点3:基調と証憑類は必ず整備する
赤字のときほど、帳簿と証憑類の整備は徹底する必要があります。
赤字決算は税務署にとってもチェック対象となりやすく、特に「本当に事業で必要な支出だったのか?」という視点で見られます。そのため、支出内容が正当であることを証明する帳簿や、領収書・請求書などの証憑類が欠かせません。これらが整っていないと、税務調査のリスクが高まり、最悪の場合は経費として否認される可能性があります。
赤字が続いたときの判断基準

マイクロ法人が一時的に赤字になるのはよくあることですが、何年も赤字が続く場合、「法人を続けるべきかどうか」と迷う人も多いでしょう。
ここでは、法人継続か休眠・解散かを判断するための3つの視点を紹介します。
その1:赤字の原因が明確かどうかを見極める
赤字が続いている場合は、その原因が明確で、説明できるものなのかを確認しましょう。
赤字には「投資的な赤字」と「経営不振による赤字」の2種類があります。前者であれば将来の利益に向けた必要経費として許容できるかもしれませんが、後者であれば抜本的な見直しが必要でしょう。原因が曖昧なまま法人を続けても、無駄なコストだけが積み上がってしまいます。
その2:法人維持にかかるコストとメリットを比較する
マイクロ法人を継続すべきか迷ったときは、年間の維持コストとえられるメリットを冷静に比較しましょう。
マイクロ法人は利益が出ていなくても、法人住民税(最低7万円前後)、会計ソフトや税理士報酬などの維持費が発生します。これに対して、節税や信用力といった法人のメリットが見合っていない場合、コストだけが先行して、法人を持ち続ける意味が薄れてしまいます。
その3:今後の見通しと法人活用の可能性を検討する
赤字が続いていても、今後の見通しや法人を活かす計画があるなら、継続する価値は十分にあるでしょう。
マイクロ法人は、利益を出すことだけが目的ではありません。将来に向けて「使える器」として機能することも大きなメリットです。信用力の確保、資産管理、著作権、不動産収入の受け皿など、将来的に法人格が必要となる場面が見えているなら、赤字を理由に安易に解散するのは得策とは言えないでしょう。
赤字が信用や融資に与える影響

マイクロ法人の赤字決算は、単なる経営状況の一面でしかありませんが、第三者からは「信用リスク」として捉えられる可能性もあります。
ここでは、法人の信用力や融資、取引への影響について具体的に解説します。
影響1:融資審査では「赤字=信用低下」と見なされやすい
マイクロ法人が赤字決算を続けていると、金融機関の融資審査では「信用力が低い」と判断されやすくなります。
銀行や信用金庫などの金融機関は、融資審査の際に、過去2~3期分の決算書を確認します。その際、連続して赤字が続いている法人は「返済能力に不安がある」と評価されやすく、融資を断られたり限度額を下げられたりするかもしれません。特に、設立して間もない法人や売上が少ないマイクロ法人は、収益力を重視される傾向にあるため注意が必要です。
影響2:法人口座の開設・維持が難しくなることも
赤字が続くマイクロ法人は、銀行での法人口座の新規開設や既存口座の維持が難しくなることがあるかもしれません。
銀行は、法人口座を開設・維持する際に、事業の実態、継続性、信用力を重視します。赤字決算が続いている法人、売上がほとんど確認できない法人は、実体のない法人や資金洗浄のリスクがある法人として警戒され、口座開設が断られることがあります。また、すでに開設済みの講座でも、長期間にわたって出入金が少ない場合には、凍結や解約の対象になる可能性があります。
影響3:取引先との信用にも影響が出る可能性がある
赤字が続いているマイクロ法人は、取引先からの信用を損ない、新規契約や継続取引に悪影響を及ぼすかもしれません。
法人同士の取引においては、「この会社と安心して取引できるか」が重要な判断基準となります。決算書や登記情報を確認された際に赤字が続いていると、「支払いが滞るかっもしれない」「将来性がないかもしれない」と懸念されることがあります。特にBtoBビジネスや長期契約を前提とする取引では、赤字が与える影響は決して小さくありません。
まとめ

マイクロ法人が赤字になったからといって、すぐに失敗や解散を考える必要はありません。赤字には、節税の一環として意図的に生じるものや、将来の利益につながる投資型の赤字もあり、一概に悪いものとは言えないからです。
赤字が続く場合は、「なぜ赤字なのか」「今後どう活用するのか」を明確にした上で、法人を維持する意義があるかどうかを見直しましょう。適切な判断と運営を行えば、マイクロ法人は赤字でも有効な経営ツールとして機能し続けます。
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