「マイクロ法人を作って節税したい。でも、今は非課税世帯だから、制度を失うのが不安…」そんな悩みを抱える方が増えています。
そこでこの記事では、「マイクロ法人の設立が非課税世帯に与える影響」をテーマに、制度の基本からリスク回避のポイントまでを、わかりやすく解説します。これから法人化を検討する方が安心して判断できるでしょう。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
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非課税世帯とは?基準とメリット・デメリット

マイクロ法人の設立を考える前に、まず知っておきたいのが「非課税世帯」の正しい定義とその仕組みです。
ここではまず、非課税世帯の定義や具体的な基準と、メリット・デメリットについて解説します。法人化を検討する際の重要な判断材料となるでしょう。
非課税世帯の定義
非課税世帯とは、住民税が課税されない所得水準にある世帯のことを指します。
住民税には「均等割り」と「所得割」の2つがあり、どちらか一方でも課税されない場合に、その家庭は「非課税」となります。世帯全員がこの状態であれば「非課税世帯」となり、さまざまな公的支援の対象となります。
例えば、単身世帯で年収100万円程度の場合、住民税の非課税基準を下回るため、非課税となる可能性があります。扶養親族の有無や年齢、障害の有無などによって基準は異なります。自治体ごとに条件に差があるため、詳細は市区町村のホームページなどで確認してくださいね。
なお、横浜市の場合は以下のとおりです。
- 均等割・所得割ともに非課税となる人
・生活保護法により生活扶助を受けている人
・障害者、未成年者、寡婦又はひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下の人 - 均等割が非課税となる人
・扶養家族のない人…前年の合計所得金額が35万円+10万円以下の人
・扶養家族のある人…前年の合計所得金額が「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円」以下の人 - 所得割が非課税となる人
・扶養家族のない人…前年の総所得金額等が35万円+10万円以下の人
・扶養家族のある人…前年の総所得金額等が「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+32万円」以下の人
非課税世帯になると受けられる支援
非課税世帯に当てはまると、さまざまな生活支援や負担軽減措置を受けられます。これらの制度は、所得の少ない世帯の暮らしを安定させるために設けられており、経済的な助けとなるものが多く含まれます。
主な支援内容は以下のとおりです。
- 国民健康保険料の減免
- 介護保険料・後期高齢者医療保険料の減額
- 就学援助・学費支援
- 高等教育の無償化(大学・専門学校)
- 住民税非課税世帯等臨時特別給付金などの給付金制度
このように、非課税世帯になることで日常生活にかかる公的な費用を抑えることができ、経済的な余裕を確保しやすくなります。ただし、自治体ごとに対象条件や申請方法が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
非課税世帯のメリット・デメリット
非課税世帯には多くの経済的メリットがありますが、その一方で、社会的・制度的なデメリットも存在します。制度の恩恵だけに目を向けず、バランスよく理解することが重要です。
非課税世帯になると税負担がなくなり、各種支援制度の対象となるため生活が安定しやすくなります。しかしその反面、「低所得」と見なされることで、クレジットカードの審査や住宅ローンの申請に不利になることがあり、収入を増やしたくても支援の打ち切りが不安で働きづらいという状況にもつながります。
メリット | デメリット |
---|---|
税負担の軽減 社会保険料の減免 教育支援(就学援助・高等教育の無償化) 各種給付金 医療費助成 公共料金の軽減 | 信用調査の不利 収入増の制約 将来設計が難しい 社会的な目 制度の不安定性 |
非課税世帯は一時的な経済的メリットが大きい反面、長期的な成長や自立を阻む側面もあるということです。制度の利点とリスクをよく理解したうえで、自分にとって最適な働き方や収入の形を見極めることが大切です。
なお、マイクロ法人の概要は別記事で詳しく解説しているので、参考にしてくださいね。
マイクロ法人を作ると非課税世帯から外れるのか?

マイクロ法人を設立すると、状況によっては非課税世帯から外れる可能性があります。特に「役員報酬」を受け取る場合には注意が必要です。
非課税世帯の判定基準は個人の所得に基づきます。マイクロ法人を設立しても、役員報酬を受け取らなければ、個人所得としてはカウントされません。しかし、役員報酬を受け取ると「給与所得」として住民税や国民健康保険の課税対象となり、非課税条件を満たさなくなる可能性があります。
たとえば、年収がゼロで非課税だった人が、マイクロ法人から月5万円の役員報酬を得ている場合、年間60万円の所得が発生します。この金額が非課税基準を超えると、住民税が課され、非課税世帯ではなくなります。その結果として、医療費助成や給付金などの支援も受けられなくなるかもしれません。
非課税世帯のままマイクロ法人を維持する方法はあるのか?

結論、一定の条件下であれば、非課税世帯のままマイクロ法人を維持することは可能です。ただし、そのためには、収入の取り方や法人の設計を慎重に行う必要があります。
方法1:役員報酬をゼロに設定する
非課税世帯のままマイクロ法人を維持したいなら、役員報酬をゼロに設定するのが最も確実な方法です。
非課税世帯の判定は、個人の所得金額に基づいて行われます。マイクロ法人の代表者が役員報酬を受け取ると、それが「給与所得」としてカウントされ、住民税や国民健康保険料の課税対象になる可能性が出てきます。報酬をゼロにすれば、その分の所得が発生せず、非課税世帯の条件を維持しやすくなります。
方法2:法人の利益を内部留保する
マイクロ法人の利益を個人に分配せず、法人内に留保すれば、個人所得を発生させずに非課税世帯の条件を維持できます。
非課税世帯の判定はあくまで「個人の所得」に基づいて行われるため、法人が利益を出しても、それを役員報酬や配当として個人に支払わなければ課税対象にはなりません。利益を法人内に留保することで、個人の課税所得をゼロに保ち、非課税世帯としての支援を継続することが可能になります。
方法3:事業収入を家族名義で運営する
非課税世帯の資格を維持したい場合、マイクロ法人の代表や収入の名義を自分以外の家族にするという方法があります。
非課税世帯の判定は「世帯の所得合計」によって決まりますが、収入の主体が別世帯に属する家族であれば、自分の所得としてカウントされない可能性があります。つまり、マイクロ法人の代表を配偶者や別世帯の家族にして、法人収入をそちらに集中させれば、自分の所得ゼロを維持しやすくなります。
方法4:住民税・国民健康保険の課税基準額を下回るよう調整する
非課税世帯としての支援を受け続けるには、所得を各自治体の課税基準額未満に抑えることが現実的な対応策のひとつです。
住民税や国民健康保険の非課税判定は、前年の所得金額に基づいて決まります。基準額は自治体によって異なりますが、たとえば単身世帯であれば年収100万円前後、扶養親族がいる場合はさらに高くなります。役員報酬を少額に抑えるなどの調整によって、このラインを下回るようにすれば、非課税世帯の資格を維持できます。
方法5:青色申告控除や扶養控除などを最大限活用する
非課税世帯の条件を満たすためには、青色申告控除や扶養控除などの各種所得控除を積極的に活用し、課税所得を圧縮することが重要です。
非課税かどうかの判断基準は「課税所得」に基づいて行われます。たとえ一定の収入があっても、各種控除を活用することで所得を引き下げることができ、住民税や国民健康保険料の課税対象から外れる可能性があります。とくに青色申告控除(最大65万円)や扶養控除は、個人所得を大きく減らせる有効な手段です。
非課税世帯のまま法人化する際の注意点

非課税世帯のままマイクロ法人を設立・維持したいと考える場合、単に「収入を抑えれば良い」というわけではありません。制度の仕組みや世帯の構成、自治体ごとの運用ルールを踏まえた慎重な対応が必要です。
注意点1:世帯単位で課税判定されることを忘れない
非課税世帯の判定は、個人ではなく世帯全体の所得に基づいて行われるため、自分だけでなく家族の収入にも注意が必要です。
住民税の非課税判定や各種支援制度の対象かどうかは、市区町村が「世帯全体の所得」を基に判断します。たとえ自分が無収入でも、同じ世帯に住む家族が一定の収入を得ていれば、非課税世帯として認められないかもしれません。特に、マイクロ法人を家族名義で設立する場合、その家族の所得が増えることで世帯全体の判定に影響を及ぼします。
注意点2:役員報酬が「収入」として扱われるタイミングに注意
役員報酬は、実際に受け取った年の所得として課税対象になるため、支給のタイミングによって非課税世帯の判定に影響を及ぼします。
非課税世帯かどうかの判断は、原則として前年の所得に基づいて行われます。そのため、年内に役員報酬を受け取ると、その年の所得としてカウントされ、翌年度の住民税や国民健康保険料に反映されることになります。タイミングを誤ると、想定外に支援制度から外れるリスクがあります。
注意点3:生活費とのバランスを考えること
非課税世帯の資格を維持するために収入を抑えすぎると、生活費が不足し、日々の暮らしに無理が生じる恐れがあります。
非課税世帯で受けられる支援は、確かに魅力的でしょう。しかし、その条件を満たすために必要以上に収入を減らしてしまうと、家計が立ち行かなくなるかもしれません。特に、役員報酬をゼロにしたり、事業利益を法人内に留保したりすると、個人としての可処分所得が極端に少なくなり、生活費をまかなえなくなるリスクがあります。
注意点4:名義貸しや形式だけの法人はリスクが高い
非課税世帯を維持するために、実体のない法人や家族名義で形式的に設立した法人を使うと、税務上・法務上のリスクが高まり、重大なペナルティを受けるかもしれません。
法人は、実体のある事業を継続的に行うことが前提です。たとえ家族名義で設立しても、実際の運営や収益の管理が別人(たとえば非課税世帯の本人)であれば、それは「名義貸し」と見なされかねません。これは、税務署や金融機関に対して虚偽の申告と判断され、調査や処分の対象になるリスクをはらんでいます。
まとめ

非課税世帯として、支援を受けながらマイクロ法人を維持することは、工夫次第で可能です。しかし、そのためには「収入の取り方」「タイミング」「世帯構成」など、制度に影響する要素を正しく理解し、慎重に設計しましょう。
短期的な節税や支援制度の維持だけを目的にするのではなく、自分や家族のライフプランに合わせた健全な法人運営を目指すことが、長い目で見て、もっとも安心・安全な選択ではないでしょうか。
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