法人なりをするときに、株式会社(合同会社)を前につけるか後ろにつけるか、どちらがいいか悩みますよね?会社のイメージやビジョンも含めて検討すると、無限ループに入ってしまうこともあります。
そこでこの記事では、前株・後株の統計的な割合、失敗しないための4つの基準、登記前に知っておくべき注意点をわかりやすく解説します。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
事務歴15年以上。2021年に独立、幅広い業種の一人社長や個人事業主のサポートをしています。「仕事のていねいさ」「相談しやすさ」に定評。
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「前株」と「後株」に決まりはある?

「株式会社(または合同会社)」を商号の前につけるか(前株)、後ろにつけるか(後株)について、法律上の決まりはありません。どちらを選んでも登記でき、事業運営上の優劣もありません。
法人の設立などを定める会社法では、「商号の中に株式会社(合同会社)という文字を用いらなければならない」とされているだけで、その配置までは指定されていません。つまり、社名の前後どちらに配置するかは経営者が自由に決めることができます。
実際、日本を代表する大企業の社名を見ても、その選択は分かれています。
| 前株の例 | 後株の例 |
| 株式会社電通 株式会社リクルート 株式会社久保田鉄工 | トヨタ自動車株式会社 ソニーグループ株式会社 任天堂株式会社 |
統計的には「前株」と「後株」のどちらが多いのか?
東京商工リサーチの統計結果(2017年)によれば、もっとも多いのは「前株」の7割、次に「後株」の約3割、まれに「中株」といって社名の間に法人格が含まれているケースです。統計上は前株が主流です。
これは、日本のビジネスシーンにおいて「株式会社(合同会社)」という組織形態を先に提示することで、相手に安心感を与えやすいという実務上のメリットがあるからです。特に電話連絡では、先にみずからの情報を開示するため、聞き手が法人からの連絡だとすぐに認識できる点に利便性を感じられやすいです。
ただし、上述のとおり、前株が多数派だから前株にしなければならない、ということではありません。あくまで参考データとしてとらえるのが無難でしょう。
「前株」と「後株」で会社の印象は変わるのか?
「前株」と「後株」では、取引先や顧客が受ける第一印象に明確な違いが生まれます。どちらにするかで、会社の顔としての見え方が変わると考えて間違いないでしょう。
「株式会社」が先に来る場合、カッチリした法人格であることをアピールできます。近年では、勢いのあるベンチャー企業やスタートアップ企業があえて「前株」にすることで、組織としての力強さやプロフェッショナルな姿勢を示すケースもあります。
一方、後株にすると社名が先に来るため、サービス名やブランド名が記憶に残りやすくなります。また、トヨタ自動車や三菱重工といった日本を代表する企業の多くが後株であることから、どっしりとした老舗感や、ゆるぎない安定感といった王道のイメージを与えやすくなります。
前株と後株の比較表
| 比較項目 | 前株 | 後株 |
| 与える印象 | 組織としての信頼感 誠実・スピード感 | ブランドの個性 どっしりとした安定感 |
| ターゲット層 | 法人(B to B) 士業・建設・製造業など | 一般消費者(B to C) IT・クリエイティブ系など |
| メリット | 法人であることがすぐに伝わり、安心感がある | 社名(ブランド名)が先に耳に入り、覚えやすい |
| 歴史的傾向 | 近年のトレンドで、ベンチャーや新興企業に多い | 日本の伝統で、トヨタや三菱などの老舗大企業に多い |
| 事務的な側面 | 銀行のカナ検索で「カ)」の項目に固まる | 銀行のカナ検索で、社名の頭文字から探せる |
後悔しないための4つの判断基準

「前株でも後株でも自由」と言われると、かえって決められないこともあるかもしれません。そこで、多くの経営者が実際に実践している「失敗しないための5つの判断材料」をまとめました。
基準1:社名との「語呂・リズム」で決める
もっともシンプルかつ重要なのが、声に出したときの響きです。
一般的に、社名が短い場合は前株にすると収まりがよく、社名が長い場合は後株にすると、ブランド名が強調されてバランスが取れると言われています。
基準2:アルファベット表記・ドメインとの相性
将来的に海外展開を視野に入れていたり、アルファベットのロゴを作ったりする場合は、英語表記とのバランスも考慮しましょう。
「Co.,Ltd.」や「Inc.」は、かならず社名の後ろに入ります。そのため、日本語表記と英語表記を合わせるために、日本語でも後株にしておいた方が、国内外でブランドイメージを統一しやすくなります。
基準3:同名他社との差別化
もし、同じ地域や同じ業種に似たような名前の会社がある場合、前株と後株を入れ替えることで混同を避けることができます。
法務局の同一商号制限(同一住所で同一名称は不可)はクリアしていても、近隣に似た名前があるのは紛らわしいですよね。あえて少数派の配置を選ぶことで、独自性を出す戦略です。
基準4:姓名判断や画数へのこだわり
日本の経営者が意外に気にしているのが「画数」です。
「株式会社」の4文字(あるいは「カブシキガイシャ」のカウント)を前に入れるか後ろに入れるかで、社名全体の総格が変わります。
「どうしてもこの社名を使いたいけれど、画数が不吉」という場合に、前株と後株を入れ替えることで、運気の良い画数に調整するのも立派な判断基準のひとつになるでしょう。
画数で迷う方は、「社名占い」の記事も参考にしてくださいね。
登記する前に確認しておきたい注意点

「登記後になにかあれば変えればいい」というわけではありません。一度登記が完了してしまうと、法人名の一文字を変えるだけでも、手続きが煩雑です。登記する前に確認しておきたい注意点をご紹介します。
その1:商号変更には「登録免許税」がかかる
前株と後株を入れ替えることは、法律で「商号(社名)の変更」にあたります。そのため、管轄の法務局で手続きを行う必要があり、登録免許税として3万円の費用が発生します。司法書士に手続きを依頼する場合は、報酬として別途数万円が必要です。
その2:名刺・印鑑・看板の作り直し費用
社名が変われば、当然ながら備品もすべて刷新しなければなりません。
たとえば、会社の実印(代表者印)、名刺、封筒、看板等が挙げられます。社用車に社名を入れている場合は、その貼り替え費用も意外にかかります。
その3:銀行口座や各種契約の名義変更手続き
費用以上に経営者の頭を悩ませるのが、名義変更の手続きにかかる膨大な時間と労力でしょう。
- 銀行口座の名称変更
- 社会保険・雇用保険の手続き
- クレジットカード・賃貸借契約・リース契約
- 取引先との各種契約書の結び直し
これらはすべてそれぞれの窓口で手続きを行う必要があり、通常業務を圧迫する大きな負担となります。
その4:取引先や顧客への説明コストと不信感
設立して間もなく社名を変更すると、取引先から「何かトラブルがあったのか?」「社名も定まらないまま見切り発車したのか?」と、不信感につながりかねません。
特に、法人なりをしたばかりの時期は、信頼を積み上げる時期です。社名の微調整にリソースを割くのは、ブランディングの観点からも避けたいところですね。
まとめ

「前株」と「後株」に法的な決まりはなく、最終的には経営者が自由に決めることができます。信頼感やスピード感を出すなら「前株」、ブランド名や安定感を強調するなら「後株」という視点で、自社の戦略に合う方を選びましょう。
迷った際は、社名の長さとのバランス、銀行振込時の利便性をシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。一度登記すると、後からの変更には数万単位のコストと膨大な名義変更の手間がかかります。慎重な判断をしつつ、納得のいく社名にしてくださいね。
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