「マイクロ法人でも、育休は取れるの?」――この疑問は、出産や育児を控えた一人社長・少人数経営者にとって、切実なテーマとも言えるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、マイクロ法人の代表が育休を取るために必要な制度の理解と手続き、実務上の注意点をわかりやすく解説します。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
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マイクロ法人の代表でも育休は取れるのか?

マイクロ法人の代表でも、「条件を満たせば」育休を取ることは可能です。ただし、会社員とは違い、いくつか法的なハードルと手続き上の工夫が求められます。
なぜなら、本来、育休は雇用契約に基づいて働いている被雇用者のための制度だからです。マイクロ法人の代表者は、基本的に「会社役員」として扱われ、雇用保険の適用対象外で、そのままでは育休制度や育児休業給付金の対象になりません。しかし、実態として雇用契約が成立しており、雇用保険に加入している場合には、育休を取得し、給付金を受け取れる可能性があります。
- 雇用保険に加入している
- 育休開始日前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上ある
- 育休中に役員報酬を停止、または減額をしている
- 業務を実質的に行っていない(名義だけの休業は不可)
- 法人内に業務を代替できる体制がある(最低限の事業継続が可能)
- 就業規則または雇用契約書に、育休取得に関する記載がある
つまり、マイクロ法人の代表者であっても、制度の仕組みと要件を理解し、準備を整えれば、育休の取得は現実的な選択肢になり得るでしょう。
育児休業給付金を受け取る条件とは?

マイクロ法人の代表でも、条件を満たせば育児休業給付金を受け取ることは可能です。
ただし、給付金の対象になるためには、雇用保険の被保険者としての実態が必要です。法人の代表者が自らに対して雇用保険を結ぶことは原則できないため、制度の枠組みを正しく理解し、実態に合った手続きと体制づくりが欠かせません。
育児休業給付金を受け取るには、以下の主な要件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険に加入している
- 育休開始前の2年間に、11日以上勤務した月が12ヶ月以上ある
- 育児休業中に報酬を受け取っていない(または月給の8割未満)
- 実際に業務から離れて育児に専念している
たとえば、マイクロ法人の代表者であっても、別の役員や家族に業務を引き継ぎ、自身の役員報酬を一時的に0円にした上で、雇用契約に基づく給与を得ており、かつ雇用保険に加入している場合には、給付金の対象となる可能性があります。
このように、育児休業給付金を受け取るには形式だけでなく「実態」が問われるため、事前の準備と専門家への相談が欠かせません。条件をひとつひとつ丁寧に確認して、確実な給付申請につなげていきましょう。
育休を取得する際の手続きと準備

マイクロ法人の代表が育休を取得する場合、一般的な会社員と比べて、手続きや準備が複雑になる傾向があります。特に、「雇用保険の実態」「業務の代替体制」「役員報酬の取り扱い」など、法人ならではの確認ポイントが多いため、育休開始前にしっかり準備しておくことが重要です。
ここでは、育休取得に向けた具体的な手続きと準備項目を整理して紹介します。
育休を取得する際の手続き
手続き1:雇用契約書の整備と労働実態の証明
育児休業給付金の対象となるためには、役員でも「被雇用者の実態」が必要です。給付金は雇用保険の被保険者に対して支払われるため、雇用契約に基づいた労働実態がなければ申請が認められません。
たとえば、法人の代表でも、具体的に業務内容や勤務時間を明記した雇用契約書を交わしておき、労働時間に応じた給与が支払われていることを証明できれば、労働者性が認められるかもしれません。
手続き2:役員報酬の停止または調整
育休中は報酬を支払わない、または月額給与を8割未満に抑えることが必要です。給付金の要件として「賃金が休業前に8割未満になっていること」があり、報酬が継続していると給付の対象外になります。
手続き3:ハローワークでの育児休業給付金の申請
育児休業給付金の需給には、ハローワークでの申請が必須です。給付金は雇用保険から支給されるため、管轄のハローワークに対して書類提出・審査が必要になります。
申請手続きは複雑なため、事前にハローワークや社労士に相談して準備を進めるとスムーズでしょう。
育休を取得する際の準備
準備1:育休中の業務体制を整える
育休中でも会社が機能し続けるよう、業務の代行体制を整えておく必要があります。実務を継続していると「育休中ではない」と見なされ、給付対象外になる可能性があるためです。
育休取得前に、自分が関与しなくても会社が回る仕組みを作ることが、給付金を正当に受け取るための前提条件になります。
マイクロ法人だからこそ注意すべきポイント

マイクロ法人の代表が育休を取得する際には、一般企業の従業員とは異なる独自のリスクと制約があります。なぜなら、法人の運営を担う代表者が休業するため、「業務の停止=会社の機能停止」につながりかねないからです。
ここでは、マイクロ法人だからこそ気をつけるべき実務面の注意点を詳しく解説します。
注意点1:育休と報酬停止のタイミング調整
給付金を受け取るには、育休と同時に報酬を止めるか減額する必要があります。雇用保険の規定では、「育児休業中に支払われる賃金が8割未満であること」が給付条件だからです。
役員報酬は定期同額で支払う必要があるため、育休に入る前の役員報酬の変更は、期首や株主総会など所定の手続きと時期に合わせて調整が必要です。報酬を勝手に途中で止めると、税務上問題になることもあります。
注意点2:実態として業務から離れているか
「業務をしていない実態」がないと、育休として認められません。経営者である以上、育休中もメールチェックや経費処理などを行っていると、「休業ではない」と判断される可能性があるからです。
業務から完全に離れるための準備と、育休中はログイン・連絡を控える運用ルールが不可欠です。
注意点3:業務代替体制の不備はリスク
自分が休む間の業務体制が整っていないと、法人の信用や運営に影響します。小規模法人では、代表の業務依存度が高いため、育休中に取引が滞る、納税を忘れる、顧客対応ができないなど、実務的なトラブルに直結するかもしれません。
育休中の事務作業は信頼できる外注先に委託し、経費支払いなどは期日管理ツールで自動化しておくことで、最低限の法人運営を維持することも検討されるでしょう。育休前に「業務の見える化」「誰が何を代行するか」を決めておくことが重要です。
注意点4:書類整備と法的根拠の確認不足
雇用契約や就業規則が曖昧だと、給付金申請時に不利になります。ハローワークは「実態」に加え「書類の整備状況」も審査対象にするため、不備があると申請自体が受け付けられない場合があります。
法的根拠を明確にするために、事前に社労士に契約書や就業規則の確認を依頼するのが安心です。
まとめ

マイクロ法人の代表者であっても、条件を満たせば育休を取得し、育児休業給付金を受け取ることは可能です。ただし、会社員とは異なり「役員=経営者」という立場ゆえに、制度の適用には雇用保険の加入や報酬の調整、業務の実態管理など、さまざまな準備と工夫が求められます。
出産や育児は人生の大きな転機です。だからこそ、制度を正しく活用しながら、法人も家庭も安定して運営できるよう、計画的な準備を進めていきましょう。
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