在宅勤務は柔軟な働き方を実現できる一方で、情報管理や契約遵守といった面ではリスクが多いです。特に、個人事業主や一人社長にとっては、みずからを律してルールを整えなければ信用低下につながりかねません。
そこでこの記事では、在宅勤務で意識すべきポイント、怒りやすいリスク、日常で実践できる対策、実際の事例を通して、安心して事業を続けるためのヒントをお伝えします。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
在宅勤務で注意すべきコンプライアンスの視点

在宅勤務では、情報管理を中心としたコンプライアンス意識を高めることが、信頼を守るために不可欠です。
オフィスとは異なり、自宅では仕事上で使用する機密情報が第三者の目や手に届きやすく、セキュリティ対策も自己管理に委ねられます。少しの油断やルール違反が、情報漏えいや信用失墜につながりかねません。
たとえば、
- 顧客情報を保存した私用PCがマルウェア観戦して、外部に流出した
- クラウドの誤操作で本来非公開のファイルが全員に共有された
- 在宅勤務中の雑談やSNS投稿に画面情報が映り込み、機密情報が外部に広がった
という事例があります。「自分は大丈夫」という思い込みがトラブルにつながるので、機密情報を扱っていると意識して仕事に取り組みたいものです。
個人事業主が直面する在宅勤務のコンプライアンスリスク

在宅勤務は自由度が高いですが、会社に出勤する仕事とは違い、自己責任でコンプライアンスを遵守する必要が高まります。ここでは、特に注意すべき代表的なリスクを紹介します。
その1:情報漏えいリスク
まずは、顧客や取引先の情報が外部に漏れることです。
オフィスと異なり、自宅環境ではセキュリティ管理が不十分になりやすいです。家族や訪問者の目に触れやすく、パソコンをはじめ使用している機器の盗難・紛失があった場合、重大な情報漏えいに直結しやすくなります。
その2:契約違反リスク
契約先との取り決めを軽視すると、契約違反によるトラブルに発展するおそれがあります。
在宅勤務の場合、機密情報を自宅で取り扱うため「秘密保持義務」が契約書に明記されている場合が多いです。それを遵守できなかった場合には信用を失うだけでなく、損害賠償の対象になる可能性があります。契約時には記載条項をていねいに確認し、在宅勤務にて実行可能な管理体制を整えましょう。
その3:業務外利用による信用の低下リスク
業務用の端末や時間を私的に使うのも、信用を損ねる原因になるでしょう。
特に一人で事業を運営する場合、私的利用と業務利用の境界があいまいになりやすいです。仮に私的利用の時間も業務と見なして請求してしまったら、過剰請求と思われたり、業務にルーズな人という印象を与えたりすることもあります。
その4:セキュリティ不備による不正アクセスリンク
セキュリティ設定を怠ると、外部からの不正アクセスにより業務データが盗まれるリスクがあります。
在宅勤務では、VPNやクラウドサービスを利用する場面が多く、人称設定やソフトウェア更新を怠ると、不正アクセスの標的になりやすいです。VPN設定は難しい場合でも、セキュリティソフトの導入やクラウドアカウントの二重認証など、できる範囲で最大限の対策が必要です。
在宅勤務でできるコンプライアンス対策【実践編】

在宅勤務では、情報管理や契約遵守の観点でリスクが多い仕事と言えるでしょう。だからこそ、日常的にできる具体的な対策を講じることが大切です。
以下では、個人事業主や一人社長がすぐに取り入れられる実践的な情報をご紹介します。
対策1:セキュリティ環境を整える
まずは、業務環境そのものが安全なのかを確認しましょう。
端末やネットワークのセキュリティが不十分だと、不正アクセスや情報漏えいが発生しやすくなります。小規模事業者は、コンプライアンス違反が信用損失に直結するリスクがあるので、日常的に使っているシステムが安全な状態か、その状態が維持されているかを整えることが最低ラインとなるでしょう。
- VPNやセキュリティソフトを使用しているか
- 端末やソフトを最新バージョンに更新しているか
- 業務データを使った作業時に、フリーWi-Fiを使用していないか
対策2:情報の取り扱いルールを徹底する
情報の取り扱い方を自分でルール化し、日常的に守りましょう。
在宅勤務では周囲の目がなく、データの保存・共有について気が緩みやすいです。知らないうちに情報漏えいや契約違反をしていたというリスクがあるので、データの管理方法や共有方法を明文化し、つねに実践できている状態にしておきたいですね。
- 業務データを私用PCや使用クラウドに保存していないか
- クラウドの共有設定を確認してからファイルを送っているか
- SNSやWeb会議の背景に機密情報が映り込んでいないか
対策3:契約や規程を守る
契約で定められた情報管理や秘密保持義務は、在宅でもかならず守りましょう。
個人事業主や一人社長だからこそ、気をつけるに越したことはないでしょう。契約違反は取引停止や損害賠償の対象となることもあるので、契約書を定期的に確認して、自分の在宅勤務の環境が条件を満たしているのかを点検することが欠かせません。
- 秘密保持契約(NDA)の内容を理解しているか
- 契約で定められた保存・廃棄方法を実行しているか
- 契約条件に合わないサービス・システムを使っていないか
対策4:業務用と私用を区別した仕組みを用意する
業務専用と私用を区別した仕組みを導入するのも一案でしょう。
仕事と私用の環境を同じにすると、誤操作や混在が起きやすく、コンプライアンス違反につながりかねません。家族と共用の通信機器・端末で業務を行うなどは、もってのほかです。予算の許す範囲で対応することも検討されるでしょう。
- 業務PCや業務用アカウントを分けて使っているか
- 家族が業務用データにアクセスできない仕組みになっているか
- 私用メールで顧客データを送信していないか
在宅勤務で起こりがちなコンプライアンス違反事例

在宅勤務やリモートワークが普及する中、企業においても情報管理や規律をめぐるトラブルが数多く発生しています。
ここでは、報道や公式発表で明らかになった事例をいくつか紹介します。
事例1:千葉大学附属病院の患者情報流出
2021年、千葉大学医学部附属病院で勤務する医師が、病院規定に反して患者情報を私用PCに保存し、さらに無許可のクラウドサービスと同期していました。その結果、フィッシング詐欺を通じてIDやパスワードが盗まれ、患者586名分の情報が外部から閲覧可能な状態になったと発表されています。
▶ 千葉大学医学部附属病院「患者情報の管理に関するご報告とお詫び」
事例2:熊本県立高校教諭の遠隔操作被害
熊本県立高校の教諭が、自宅でテスト問題を作成していた際、ウイルス感染を装う偽メッセージにだまされ、遠隔操作ソフトを導入してしまいました。そのPCには生徒名簿などの個人情報が保存されており、第三者が閲覧できる状態になった可能性があります。
業務データを私用PCで扱ったこと自体が規定違反であり、在宅勤務時のセキュリティ意識の甘さが被害を拡大させました。
▶ Cyber Security.com「熊本県教諭が基準反して生徒情報を私用端末に、遠隔操作で流出の可能性」
事例3:熊本県立大学の職員用PC不正アクセス
熊本県立大学で、職員の業務用PCが遠隔操作され、氏名や電話番号といった個人情報が流出した可能性があると発表されました。大学は不正アクセスの経路調査やアクセス制御の強化に取り組んでおり、リモート環境下でも業務端末のセキュリティが重要であることを浮き彫りにしたケースです。
▶ 熊本日日新聞「職員の業務用PC、遠隔操作される 熊本県立大で個人情報流出の疑い」
まとめ

在宅勤務にはメリットが多い一方で、コンプライアンスリスクが伴います。個人事業主や一人社長の場合には、特に注意を払って対策したいものです。
大切なのは、注意すべき視点を理解し、自分が直面する可能性のあるリスクを把握したうえで、日常的に対策を実践することです。事業規模によってできる対策は変わりますが、できる最大限の整備・対策をし続けることが事業を継続させる力になるでしょう。
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