事務代行は、小規模事業者や一人社長、個人事業主にとって業務負担を減らし、本業に集中できる便利なサービスです。しかし、法律で資格保有者に限定される仕事や、会社内部の権限が必要な業務など、外注できないものもあります。
そこでこの記事では、事務代行に依頼できない業務の具体例とその理由、補う方法、そして契約前に確認すべきポイントを整理します。正しい知識を持てば、事務代行を安全かつ効果的に活用し、外注効果を最大限に引き出せるでしょう。

小島 美和(佐藤 みなと)
合同会社あすだち 代表
時間に追われすぎない穏やかな生活を送りたくて、会社員生活を卒業→起業。オンライン事務代行として活動中。節約と時短をこよなく愛しています。息子と2人暮らしのシングルマザー。
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事務代行で依頼できない業務とは?

事務代行は幅広いバックオフィス業務を任せられる便利なサービスですが、すべての仕事を依頼できるわけではありません。特に、法律や資格が関係する業務、会社内部の権限が必要な業務、高度で専門的な判断を要する業務は外注できないケースが多いです。
法律・資格要件によって依頼できない業務
事務処理には、法律上、特定の資格を持つ専門家だけが行える業務があります。これらは、無資格の事務代行業者に依頼すると違法行為となり、依頼する側にも責任が及ぶ可能性があるため注意が必要です。
法律・資格要件によって依頼できない業務は以下のとおりです。
- 登記や特許の申請
- ふるさと納税の金額の試算
- 社会保険周りの書類や提出
- 助成金の申請(厚生労働省のもの)
- 確定申告の書類作成、e-TAX手続き
- 会社の定款や株主総会議事録作成
その他、法律相談、契約書の作成、権利義務・事実証明に関する文書作成も当てはまります。これらの業務は、事務代行に資料整理や入力作業までを依頼し、最終的な申請・提出を資格保有者に任せるのが安全な方法です。法律と資格の制限を正しく理解することが、安心して外注する一歩となるでしょう。
- 弁護士(弁護士法 第72条)
- 税理士(税理士法 第52条)
- 行政書士(行政書士法 第19条)
- 社会保険労務士(社労士法 第32条の2)
- 公認会計士(公認会計士法 第47条の2)
- 弁理士(弁理士法 第75条)
会社内部の権限が必要な業務
事務代行は外部委託であるため、経営者、役員、社員にしか与えられていない決裁権や承認権を伴う業務は行えません。これらは社内内部の責任者だけが実行できる業務であり、権限を持たない第三者が行うと、法的・契約的なトラブルにつながる恐れがあります。
社内内部の権限が必要で、事務代行に依頼できない業務は以下のとおりです。
- 銀行口座の開設・送金承認・資金移動
- 契約書の締結や押印
- 経営判断を伴う取引や発注
こうした業務は、事務代行に資料作成や候補リストの作成までを依頼し、最終判断・承認は自社で行うという分業スタイルが現実的です。権限の有無をあいまいにすると、予期せぬ契約トラブルや金銭的損失を招くかもしれませんので、あらかじめ線引きを明確にしておきましょう。
事務代行で依頼できない理由とリスク

事務代行に任せられない業務があるのは、単なるサービス範囲の都合ではなく、法律上の制限、権限の制約、情報管理の安全性といった明確な理由があるためです。
事務代行で依頼できない業務がある理由は以下のとおりです。
理由1:法律や資格による制限
事務代行で対応できない業務の多くは、法律で資格保有者に限定されています。
たとえば、税務申告は税理士、登記申請は司法書士、社会保険の手続きは社会保険労務士といった具合です。無資格の事務代行業者がこれらを行うと、依頼者側も法令違反の当事者と見なされる可能性があり、罰則や信用低下のリスクがあります。
理由2:会社内部の権限が必要な業務
契約の締結や銀行口座の送金承認など、経営判断や決裁権をともなう業務は外部委託できません。これらは、会社の代表や権限委任を受けた社員しか行えないため、事務代行が代行すると契約の無効や取引先とのトラブルにつながりかねません。
理由3:情報漏えいや不正利用のリスク
顧客情報や取引データなど、気密性の高い情報を扱う業務は慎重な管理が必要です。管理体制が不十分なまま外部に任せると、情報漏洩、データ改ざん、不正利用などの被害に発展するかもしれません。万が一トラブルが起これば、損害賠償や企業イメージの失墜といった重大な結果を招きます。
事務代行で依頼できない業務を補う方法

事務代行に任せられない業務がある場合でも、工夫次第で外注効果を損なわずに対応できます。
ポイントは、
- 資格保有者と連携する
- 社内で業務の一部を担う
- 業務フローを分割する
の3つです。それぞれ見ていきましょう。
方法1:資格保有者と連携する
税務申告は税理士、登記申請は司法書士、社会保険手続きは社会保険労務士といった具合に、必要に応じて専門家と契約します。事務代行は、資料整理やデータ入力を担当し、資格保有者が最終手続きを行う形にすれば効率的です。
方法2:社内で業務の一部を担う
契約の締結や送金承認など、経営判断が伴う部分は経営者や権限者が行います。事務代行には、契約書のドラフト作成や振込データの準備を依頼することで、時間を大幅に節約できるでしょう。
方法3:業務フローを分割する
1つの業務を「準備」「入力」「提出」のように段階を分け、資格不要な部分だけを事務代行に任せる方法です。こうすれば、事務代行に依頼できない業務でも一部は外注化でき、作業分担を軽減できる増す。
事前確認のチェックリスト

事務代行を活用する際に、依頼できる業務とできない業務を明確にしておくことで、契約後のトラブルを防げます。以下のチェックリストを参考に、依頼前にあらかじめ整理しましょう。
その1:業務内容の分類
まずは、依頼したい業務を種類ごとに仕分けることです。分類することで、外注できる業務と社内で対応すべき業務の線引きが明確になり、契約後の祖語や手戻りを防げます。
おすすめは、次の3つのカテゴリに分ける方法です。
カテゴリ | 内容 | |
1 | 一般事務 | データ入力、資料作成、メール対応、スケジュール管理など、資格や決裁権を必要としない業務。 |
2 | 専門的な資格が必要な業務 | 税務申告(税理士)、登記申請(司法書士)、社会保険手続き(社会保険労務士)など、法律で有資格者に限定されている業務。 |
3 | 経営判断が必要な業務 | 契約の締結、高額な発注の承認、銀行送金など、会社内部の権限者しか行えない業務。 |
このようにあらかじめ分類しておくと、事務代行に安全かつ効率的に任せられる範囲が明確になり、無駄な見積もり依頼野菜以来の手間も減らせるでしょう。
その2:法的制限の有無の確認
事務代行に依頼する業務が、法律で保有資格者に限定されていないかを必ず確認しましょう。法的権限を無視して依頼すると、依頼者自身も法令違反に関与した扱いとなる可能性があり、罰則や信用失墜といった重大なリスクを負うことになります。
代表的な法的制限の例は以下のとおりです。
- 税務申告書の作成や税務署への代理提出(税理士)
- 契約書の作成や法律相談(弁護士・行政書士)
- 社会保険・労働保険の申請および手続き(社会保険労務士)
- 会社設立や役員変更等の登記申請(司法書士)
事務代行に依頼できるのは、これらの業務の補助的作業(資料整理やデータ入力など)までです。最終的な申請や提出は、必ず資格保有者に任せるよう、業務フローをあらかじめ組み立てておくことが重要です。
その3:権限の所在の確認
事務代行に依頼する前に、その業務を実行するための決裁権や承認権が誰にあるのかを明確にしておきましょう。外部委託先は、会社の代表者や役員といった内部権限者ではないため、契約の締結や資金の移動など、経営判断をともなう業務は直接行えません。
権限が関係する代表的な業務には、次のようなものがあります。
- 契約書の締結や押印
- 銀行口座の開設や送金の承認
- 高額な取引や発注の決定
こうした業務は、事務代行が資料作成や振込データの準備を担当し、最終承認は自社で行うという分業方式がおすすめです。事前に権限の所在を明確にしておくことで、契約無効や取引先とのトラブルといったリスクを防げます。
その4:情報の機密度の判断
事務代行に業務を依頼する際は、取り扱う情報の機密度をあらかじめ見極めることが欠かせません。顧客情報、契約内容、取引先の価格情報などは、外部に漏れると信用失墜や損害賠償につながりかねません。
機密度の判断は、次のような基準で行うと分かりやすくなります。
情報のレベル感 | 内容 | |
1 | 高気密情報 | 個人情報(氏名、住所、電話番号、マイナンバーなど)、取引先との契約条件、未公開の経営企画、金融情報 |
2 | 中機密情報 | 社内の業務マニュアル、日常的な業務データ、社内共有用の資料 |
3 | 低機密情報 | 公開済のパンフレット、営業資料、ウェブサイトに掲載している情報 |
高機密情報を扱う場合は、機密保持契約(NDA)の締結、暗号化、アクセス制限などのセキュリティ対策を必須条件としましょう。また、機密度が高い業務は、外部に出す範囲を最小限に絞ることが安全です。
情報の重要度を正しく判断すれば、リスクを最小限に抑えながら事務代行を有効活用できるでしょう。
その5:契約書での明文化
事務代行を安心して活用するためには、依頼範囲や禁止事項を契約書に明記することが不可欠です。口頭やメールだけでの合意だけでは、あとから「依頼できると思っていた」「そんな業務は契約に含まれていない」という認識のズレが生じ、トラブルの原因になります。
契約書に盛り込むべき主な項目は以下のとおりです。
項目 | 内容 | |
1 | 業務範囲の詳細 | 依頼可能な業務内容と、依頼できない業務を具体的に掲載する。 |
2 | 情報管理の取り決め | 機密保持契約(NDA)、データの取り扱い方法・保管期間等を明確にする。 |
3 | 責任の範囲 | ミスや遅延が発生した場合の対応方法や損害賠償の有無。 |
4 | 契約期間と解除条件 | 契約更新の有無、途中解約の条件や手続き方法。 |
書面で明文化しておくことで、双方が同じ基準で業務を進められ、不要な誤解やリスクを防げます。特に、小規模事業者や一人社長の場合、契約書は「万が一の保険」として必ず整備しておきましょう。
まとめ

事務代行は、小規模事業者、一人社長、個人事業主にとって業務効率化の強力なパートナーですが、法律、資格、権限、情報管理といった理由から、依頼できない業務も存在します。これらを理解せずに外注すると、法令違反、契約トラブル、情報漏えいなどのリスクを抱えることになりかねません。
依頼できない業務は資格保有者や社内対応で補い、事務代行には外注可能な範囲を集中させることで、時間と労力を最大限有効に使えます。ルールを押さえて適切に分業すれば、事務代行はあなたのビジネスを長期的に支える強い味方になるでしょう。
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